研究領域 | 植物発生ロジックの多元的開拓 |
研究課題/領域番号 |
16H01240
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
遠藤 求 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (80551499)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 概日時計 / 細胞運命決定 / 植物 |
研究実績の概要 |
植物の細胞運命決定における概日時計の役割を明らかにする目的で、葉の葉肉細胞から維管束幹細胞を経て維管束細胞へと分化誘導する系を用いて、一細胞レベルでのトランスクリプトーム解析を行った。四時間ごとに4日半のサンプリングを行い、約100細胞を次世代シークエンサーを用いて遺伝子発現を定量した。 得られたデータは正規化の後、t-sneにより次元圧縮を行った。その結果、約100細胞分のデータはほぼ一直線上に配置されたことから、葉肉から維管束細胞への脱分化・分化過程におけるトランスクリプトームの変化は連続的であることが明らかとなり、pseudo-time上への再配置が可能であることが示唆された。そこで、Wishboneとよばれるアルゴリズムを用いて、遺伝子発現プロファイルの類似度を指標にpseudo-time上にトランスクリプトームデータを再配置した。その結果、推定された細胞の並びは一部おかしいところがあったものの概ね予想通りに並んでいることが明らかとなり、この方法が植物の細胞運命決定の解析にも適用できることを見出した。さらに、時計遺伝子TOC1とCCA1の発現量に逆相関が見られ、これまでの知見が一細胞レベルでも確認された。ELF4はこれまで維管束特異的な遺伝子とされてきたが、本研究から、ELF4は維管束幹細胞特異的であることが明らかとなり、細胞運命決定との深いかかわりが強く示唆された。 また、細胞内容物を得るためのガラスキャピラリはnmサイズのものでも可能であることが明らかとなり、より小さい細胞も原理的には標的とできることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物ではまだ例の少ない一細胞解析に挑戦し、概ね良好な結果が得られていることから、研究計画は概ね順調に進展していると言える。さらに、この解析からELF4が維管束幹細胞特異的だと明らかにできた点は新しい。 一方で、予定していた200サンプルのうちサンプル調製の遅れから約半分の100サンプル分しかシークエンスが終わっていないため、今後、残り100サンプル分のデータを加えて再解析することで、より確定的な結果を得る。
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今後の研究の推進方策 |
残り100サンプル分の1細胞トランスクリプトームを行い、再度Wishboneによる解析を行うと共に、BES1や光受容体と概日時計との関係を分子レベルで明らかにしていく。さらに、ELF4がどのように細胞運命決定に関わっているのかを明らかにするために、ELF4のChIP-qPCRを行うことで、ELF4の転写標的を明らかにする。また概日時計の上流だと考えられているBES1についても同様にChIP-qPCRを行うことで、BES1からのシグナルが概日時計に入っていることを示す。
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