研究実績の概要 |
花器官の正確性と確率性: 同種集団内に置ける花びらの数のばらつきの野外調査(花被片など;キンポウゲ科Ranunculus属3種, Anemone属5種, Eranthis属1種, Ficaria属1種。舌状花;キク科3種)において、数の平均値と標準偏差に注目した統計解析を進めた。属あるいは器官特異的な3つのタイプを発見した。 その中で、1枚余分に花被片をつけて5数性から6枚性となった花について花被片同士の重なり配置を調べた結果、単子葉類に多い3数性の輪生配置が優先的に現れることを見出した(Anemone属)。5数性から3数性へ遷移する条件として、原基のらせん的配置と原基出現抑制の時間的減弱を数理モデルから予測した。 花被片がさらに多い花(7枚以上)あるいは少ない花(4枚以下)についても花被片の配置を調べた結果、限定した配置(らせんか輪生)のみが現れやすいことを見出した。興味深いことに、これらの配置の多くはらせん配置の数理モデルから統一的に再現できることがわかりつつある。花被片の数のばらつきに応じて、らせん配置から様々な数の輪生配置を生み出す仕組みが示唆された。 対称性: 上記モデルへ背腹軸方向の原基出現抑制を導入することで、キク類オオバコ科キンギョソウの野生型(5数性)やCYCLOIDEA変異体(6数性)および近縁種(4数性)について、花被片の原基配置に加えて原基出現順序を統一的に再現できた。これらの調節ロジックとして、花の背側および腹側からの原基出現抑制シグナルの強度のバランスあるいはメリステムサイズを予測した。同時に、キク類とは異なる配置を示すバラ類マメ科(5数性)やアブラナ科(4数性)、単子葉類(3数性、2数性)の調節ロジックも予測できた。 領域内共同研究:分裂組織のイメージングデータに基づき、細胞と組織(根端や維管束木部)の形状の定量数理モデルの構築を進めた。
|