研究実績の概要 |
細胞膜H+-ATPaseの活性を遺伝学的に操作し、pHの変化がPINの局在及び動態に与える影響を調べた。細胞膜H+-ATPaseの活性はC末端のスレオニンのリン酸化により制御されており、そのスレオニンをアミノ酸置換し恒常的活性型もしくは不活性型にしたH+-ATPase (CA-及びDN-AHA2)をエストラジオール依存的に発現誘導できる系を構築した。植物体全身に過剰発現する系(pER8 G10-90p:XVE<<mCherry-AHA2 (CA, DN, or WT))をPIN1-GFP及びPIN2-GFPを発現する植物体に導入し、T3世代の種子を得た。現在、発現誘導が期待通りにかかる系統を選抜中である。T2世代における予備的実験では、エストラジオール投与によりmCherry-CA-AHA2を表皮細胞に発現誘導させるとPIN2-GFPの偏在に異常が見られ、pHがPIN2の局在を制御する可能性が示唆された。同時に、重力感受細胞特異的な発現誘導系(pER8 ADF9p:XVE<<mCherry-AHA2 (CA, DN, or WT))も確立し、PIN3-GFPを発現する植物体に導入し、現在T3世代の種子を得ている。T2世代における予備的実験ではコルメラ細胞において、PIN3-GFPのシグナルが減退するとともに根の重力屈性に異常が見られ、pHがPIN3の局在を制御する可能性が示唆された。また、これらの系が実際に細胞内外のpHに影響を及ぼし得るかを確認するために、pH指示マーカーであるpHusionを発現する植物体にこれらの系を導入し、T3世代の種子を得た。 さらに、重力シグナルを仲介するLAZY1-LIKE (LZY)の相互作用因子であるRLDファミリーの機能解析を行い、RLDがPINの偏在に大きく寄与することが分かった。特に、細胞膜へのPINの分泌に関与する可能性が示唆された。また、LZY及びRLDタンパク質が重力方向に依存してコルメラ細胞において偏在化することを見出し、PINを重力方向側の細胞膜に分泌しオーキシンを重力方向下側に輸送することが示唆された。
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