公募研究
本研究では、シロイヌナズナを用いて双子葉植物の葉の発生の分子機構を明らかにすること目的とする。核タンパク質ASYMETRIC LEAVES1(AS1)-AS2が背軸側因子ETTIN/ARF3を抑制することで、葉の細胞分裂と細胞分化を制御する分子メカニズムの解明のため、今年度は以下のような研究を行った。(1) 遺伝解析により、CDK阻害タンパク質遺伝子KRP5とサイトカイニン合成酵素遺伝子IPT3がETTの下流で関与することが、複数の系で共通していることを示した。また、KRP5の発現のピークが細胞周期のDNA複製期(S期)にあることを確認した。複数のケミカルをas1またはas2変異体に投与した実験から、正常なS期の進行が葉の初期発生に重要であると考えられた。今後KRP5の詳細な発現解析をするため、KRP5-GFPを導入したas2 変異系統を作製した。また、IPT3に関してTCSnGFP導入系統を作出し、茎頂メリステムでのサイトカイニン応答を観察した。(2)AS1-AS2がETTを抑制する分子機構に関する研究を新たに進めた。AS1-AS2は核小体周辺部に局在し、ETTのDNAメチル化維持に関わる。私たちはas1、as2変異体のmodifier因子の中で、核小体タンパク質NUCLEOLIN1 (NUC1), RH10, RID2に着目した。これらは、rRNAの初期プロセシングに関わるSSU processome の構成因子のオルソログである。NUC1がETT遺伝子のサイレンシングに関わる可能性を検討するため、ETT領域のDNAメチル化の状態を調べた。nuc1変異体で野生型よりメチル化のレベルが低下していたことから、NUC1もETTのDNAメチル化維持に関わることが示唆された。(3) イネとトマトのAS2相同遺伝子は、シロイヌナズナas2変異体を部分的に相補することとを確認した。
2: おおむね順調に進展している
ETTがエピジェネティックな発現抑制を受けるメカニズムについての理解、DNAメチル化の解析が進み、新しいモデルを提案した。KRP5に関する遺伝解析と細胞周期との関連については順調に結果が得られた。また、KRP5の発現解析のためのレポーター遺伝子を導入した個体も作出し、実験材料を準備できた。mETT-GRを用いた下流因子の解析は、予定より遅れているが、今後RNA-seqにより研究を加速させたい。
(1) KRP5とGFPの融合遺伝子をもつ植物体を用いて、KRP5の発現解析と細胞内局在を解析する。茎頂メリステムにおけるサイトカイニン応答について、TCSnGFPレポーター遺伝子を用いた観察を引き続き行い、細胞分化との関連を明らかにする。mETT-GRによる核移行を誘導する系を用いて、RNA-seqにより直接の標的遺伝子の候補を絞り込み、同定する。これらの結果から、ETTの下流で細胞分裂と細胞分化が制御される仕組みを明らかにする。(2)AS1/AS2によるETT遺伝子のエピジェネティックな発現抑制における核小体の役割を解明するため、核小体タンパク質nuc1-1変異とas1またはas2との二重変異体、as2 rh10変異体等におけるETTのDNAメチル化状態を明らかにする。(3)イネとトマトのAS2相同遺伝子を導入したシロイヌナズナAS2変異体について発現解析を行い、AS1-AS2の直接の標的の発現が抑えられているかを調べる。ゼニゴケのクラスII AS2ファミリー遺伝子について、変異体の表現型解析と相補検定を行う。これらの結果をあわせて、葉の発生分化において細胞分裂と細胞分化を制御するメカニズムを明らかにする。
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Biol. Open
巻: 5 ページ: 942-954
10.1242/bio.019109
http://www3.chubu.ac.jp/faculty/kojima_shoko/
http://www.chubu.ac.jp/about/faculty/profile/0bb6a808c3a5036c19723c0437ccea8e66dba09f.html