研究実績の概要 |
双子葉植物では葉原基での向背軸(表裏)の確立が、その後の葉の形態形成に必要であると考えられる。本研究課題では、葉の形づくりの分子機構を明らかにするため、シロイヌナズナの葉原基で核タンパク質ASYMMETRIC LEAVES1(AS1)とAS2により、葉の裏側因子であるETTIN (ETT)/ARF3が抑制され、葉の表側の細胞分化と細胞分裂が制御される機構について研究を行った。 今年度は、野生型と変異体のETT exon 6 のDNAメチル化レベルを次世代シーケンスを用いて解析し、as1, as2のmodifier因子である核小体タンパク質NUCLEOLIN1 (NUC1), RNA HELICASE10が、AS2とは独立にETT DNAメチル化の維持に関わることを示した。コード領域のDNAメチル化を介した遺伝子発現制御は、これまで報告のほとんどない例である。さらに、AS2タンパク質のAS2ドメインがETT exon 1のCpG配列に特異的に結合することが明らかとなった。今後は、AS2のDNA結合とDNAメチル化との関連を解析することで、新しい発現制御機構への理解が深まると期待される。 ETTの下流因子に関する解析として、mETT-GR誘導系を用いてRNA-seqによる発現解析を行った結果、CDK阻害タンパク質遺伝子KRP5はETTにより間接的に制御されると考えられた。また、野生型と葉の表裏の分化に異常のあるas2 eal 変異体の茎頂部でのサイトカイニン応答をレポーターTCSn:GFPを用いて比較した。その結果、野生型に比べて変異体で、より強いサイトカイニン応答が検出された。従ってETTの下流でサイトカイニン合成酵素遺伝子IPT3が抑制され、茎頂メリステムでのサイトカイニン応答が抑制されることが、葉の発生・分化にとって重要であると考えられた。
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