公募研究
申請者らは、精原幹細胞ニッチであるセルトリバルブ領域の遺伝子解析から、セルトリバルブ特異的な因子群として262遺伝子を同定した。また、AMH-TRECK法を用いて、精巣網に近接して移植置換した幼若セルトリ細胞は、セルトリバルブ構造を再構築できることが明らかとなった。セルトリバルブ領域は、幼若なセルトリ細胞の特性を維持しており、さらに精巣網からのシグナルにより領域化されることが判明している。今年度は、これらの遺伝子解析から上位に抽出された曲精細管からのレチノイン酸(RA)シグナルと精巣網でのFGFシグナルによるSV領域の制御の可能性を検討した。野生型の曲精細管と生殖細胞を欠いたW/Wv精巣から精巣網、セルトリバルブ、曲精細管を単離し、FGF9およびその受容体、RAの合成酵素、分解酵素のmRNAの発現レベルを定量的qPCRにより検討した。その結果、FGF9が精巣網で高発現し、FGF受容体とRA分解酵素の発現がセルトリバルブ領域で高発現していることが判明した。SV領域特異的なRA分解酵素の発現は、in situ hybridization法においても確認された。一方、RA合成遺伝子の発現レベルは、野生型の曲精細管に比べて、W/Wv 精巣の精巣網、セルトリバルブ、曲精細管では、いずれも低い発現レベルに抑制されていた。以上の結果は、セルトリバルブ領域での精原幹細胞ニッチ能の形成には、精巣網からの正のFGFシグナルによる未分化性の維持とRAシグナルを負に抑制することにより分化抑制が誘導されることが強く示唆された。また、セルトリバルブ領域においてRA合成の盛んな精母細胞への分化が抑制されることによってRA合成自体も低いレベルで抑制されていることも推測された。
2: おおむね順調に進展している
精巣網とセルトリバルブ領域を規定するシグナル分子の一部を解明した。
シグナルの影響の解析については、形態計測を行い、きっちりと定量化することと計画している。投稿した際には想定外の下流遺伝子群の発現解析等の追試実験が要求されることが予想され、最初のうちにきっちりと想定したrevision用の対応実験をあらかじめ計画する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
J Reprod Develop
巻: in press ページ: in press
in press
Data Brief
巻: 8 ページ: 255-258
doi: 10.1016/j.dib.2016.07.055.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 33 ページ: 2811-2824
doi: 10.1016/j.bbrc.2016.05.160.
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 4192
doi: 10.1038/srep41912.