公募研究
当初の予定通り、生後10日目のマウス精巣から、ライディッヒ細胞を含む間質細胞を分取する条件検討を終え、分取した細胞を用いたトランスクリプトーム解析を行った。精巣間質に存在する3種類の細胞(ライディッヒ細胞、ラミニンを発現する精細管周囲筋様細胞と血管周皮細胞、線維芽細胞様の未分化細胞)をソーティングによって分取し、RNA調製を行った。それぞれの細胞のmRNA発現プロファイルをmRNA-sequenceにより解析した。なお、それぞれの細胞から3回の繰り返し実験を行った。精巣間質細胞と精細管内の細胞(セルトリ細胞、精子形成幹細胞)の機能的相互作用を明らかにするために、領域内の共同研究により、セルトリ細胞・精子形成幹細胞の遺伝子発現プロファイルとの比較・解析を進めている。精巣間質の再構築破綻モデルマウスのうち、Ad4BP/SF-1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスに関して、HE染色に加えて、蛍光免疫染色を含む組織学的解析を行った。その結果、精巣間質の再構築機構が破綻することにより、セルトリ細胞の機能異常と精子形成の異常が生じることが明らかになった。現在、これらの結果をもとに論文を執筆中である。なお、研究代表者が昨年4月に現所属機関に移動したため、当初の研究計画に含まれるAd4BP/SF-1過剰発現マウス、およびジフテリア毒素受容体発現マウスは、移動に時間を要したため、当初の予定通りに解析を進めることができなかった。しかしながら、解析の準備は整えることができたため、今後解析を進めていく予定である。これに加え、当初の研究計画には含まれないものの、Ad4BP/SF-1遺伝子のエンハンサー領域欠損マウスにおいて、精巣間質の再構築破綻および精子形成の異常が観察されたことから、このマウスの解析を行い、さらにAd4BP/SF-1遺伝子近傍の他の領域に関しても、ゲノム編集により欠損マウスを作出する準備を整えている。
2: おおむね順調に進展している
精巣間質細胞のトランスクリプトーム解析は、当初の予定通りに完了した。また、トランスクリプトーム解析の結果の検証や、注目する遺伝子の機能解析を行う準備を整えることができ、今後さらに解析を進めていくことが可能である。一方マウスの解析に関しては、研究代表者が昨年4月に異動し、現所属機関へのマウスの移動に時間を要したため、当初の予定通りに解析を進めることができなかった。現在はマウスの移動も完了し、解析を行う準備も整えることができた。さらに、当初の研究計画に含まれなかったが、Ad4BP/SF-1遺伝子のエンハンサー欠損マウスにおいても精巣間質の異常が認められたため、現所属機関においてゲノム編集を行える態勢を整え、今後機能未知のゲノム領域を対象に解析を行う予定である。
トランスクリプトーム解析の結果をもとに、精巣間質細胞と精細管内の細胞(セルトリ細胞・精子形成幹細胞)の相互作用を明らかにする。それぞれの細胞のトランスクリプトームをもとに、注目すべきシグナル因子を抽出し、当該因子の機能解析を行う。また、当初の予定通り、当該因子のコンディショナルノックアウトマウスの作成を行う。精巣間質再構築機構破綻マウスのうち、Ad4BP/SF-1遺伝子コンディショナルノックアウトマウスは既に解析をほぼ終了したため、Ad4BP/SF-1の過剰発現による脱分化抑制マウスの解析を今後進める。さらに、当初の計画に含まれないAd4BP/SF-1遺伝子のエンハンサー欠損マウスが興味深い表現型を示したことから、本マウスの解析を進める。さらに、Ad4BP/SF-1遺伝子近傍の機能未知の領域を対象に、ゲノム編集により欠損マウスを作出・解析する。これにより、トランスクリプトーム解析とは別の視点から精巣間質再構築機構を明らかにする。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://www.kawasaki-m.ac.jp/anatomy/