本公募研究は、CREB下流のArc誘導の意義探索に焦点を絞った研究である。具体的には、1)Arc KOマウスやconditional KOマウスを駆使し、「ポストシナプスNMDA受容体=>Ca2+ 流入=> CaMK活性化=> CREBリン酸化=>Arc転写誘導=>Arc産物のポストシナプスターゲティング」のCREBシグナリングの情報フローを生きたマウス個体脳で解明し、その破綻がどのような記憶異常をもたらすかを明らかにすることを目的とした。 初年度においては、Arc full KOマウスの解析を進め、恐怖記憶の長期相形成が低下することを明らかにした。さらに加えて、水飲み場の場所記憶のタスクをIntellicageでプログラムし、記憶の柔軟性についての詳細な記憶表現型解析を実施したところ、Arc発現が行動柔軟性を制御する制御因子である可能性が明らかとなった。これら表現型の表出に基づき、脳部位特異的にCre発現ウィルスベクターを注入し、Arc誘導が、1)恐怖記憶の長期記憶エングラム形成や、2)場所記憶の柔軟性にとって不可欠かを解明する手法の開発を行った。これにより、CREB-Arc活性化が引き起こす広範な神経ネットワークダイナミクスの長期記憶形成おける役割の解明が大きく進展した。一方、グルタミン酸受容体のシナプス制御についても、これまで全く見落とされてきた新たなルールが解明された。 本研究の成果の一部は、Okuno et al.として投稿中である。
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