公募研究
MCH神経特異的脱落マウスでは、新奇物体認識試験において、MCH神経非脱落マウスと比較して有意に記憶力が上昇していることを見いだしている。そこで、他の記憶を評価するテストにおいても同様に記憶が良くなっているのかについて検討した。記憶テストとして、恐怖条件付け-フリーズテストによって恐怖記憶への影響、モリス水迷路において空間学習記憶など様々な記憶への影響について詳細に検討した。その結果、MCH神経脱落マウスは、いずれの記憶テストにおいても記憶が向上していることが明らかになった。そこで、次に薬理遺伝学や光遺伝学を用いてMCH神経特異的な活性化を行い、記憶への影響を検討した。MCH神経特異的にCreリコンビナーゼを発現するMCH-Creマウスを用いて、Cre依存的にチャネルロドプシン2(ChR2)や改変型Gタンパク質共役型受容体(hM3Dq)を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV-CMV-FLEX-ChR2もしくはAAV-CMV-FLEX-hM3Dq)をMCH-Creマウスの視床下部外側野に局所感染させると、Cre依存的に外来遺伝子を発現させることができる。MCH神経特異的にChR2を発現させたマウスの視床下部両側に光ファイバーを留置し、青色光(470 nm, 4 mW)を照射することでMCH神経の活性化を行った。新奇物体認識試験において、MCH神経を活性化させると記憶が抑制されることを見いだした。また、薬理遺伝学を用いたMCH神経活動操作が記憶に与える影響の評価も同時に行った。MCH神経特異的にhM3Dqを発現させ、hM3Dqの特異的リガンドであるクロザピンNオキサイド(CNO)を腹腔内投与(1mg/kg)して、MCH神経を薬理遺伝学を用いて持続的に活性化させ、記憶の評価を行ったところ、光遺伝学と同様に記憶が抑制されることを確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
MCH神経が睡眠覚醒調節だけでなく、記憶の制御に関わっている事を、様々な行動テストで明らかにすることが出来ている。また、光遺伝学や薬理遺伝学などを用いてMCH神経活性化が記憶に影響を与えることも、行動実験で示すことが出来ており、計画以上に進展している。
MCH神経特異的にChR2を発現するマウスを用いて脳スライス標本を作製し、海馬錐体細胞から活動記録を行いながら、MCH神経終末を光で活性化させ海馬錐体細胞膜電位への影響を解析する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 6件、 招待講演 23件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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