公募研究
申請者が以前開発したGluA1のCALI法は、GluA1細胞外ドメインにエピトープを持つ抗体を利用したものであり、シナプス提示されたGluA1ホモマーを特異的に機能破壊できる。本研究でもGluA1のCALI技術と同様に、シナプスに発現し機能するNMDA受容体を機能破壊するために、NMDA受容体の細胞外ドメインに対する抗体を取得し、CALIが可能なもののスクリーニングを行う。NMDA受容体はヘテロ4量体を形成しており、必ずNR1サブユニットを含む。これまでに8種のNR1のスプライスバリアントが報告されているが、マウス成体脳では主にNR1-1A/NR2A複合体が主に発現しているため、本研究ではNR1-1Aに対する抗体の取得を進めた。NR1Aの立体構造情報を解析し、細胞外ドメイン領域のうち表面に十分露出した30アミノ酸を免疫源としてモノクローナル抗体を合計40クローンを得ることに成功した。さらに生細胞染色の結果から、40クローン中6クローンがnativeなNR1Aを認識することを見出した。これら6クローンについてエオシンラベルし、NR1Aを発現したCHO細胞でCALIが可能な抗体を絞り込み、最終的に内在性NMDA受容体をCALIで機能破壊出来る抗体を1クローン単離する事に成功した。本抗体について、シナプスに発現する内在性NMDA受容体のCALIを行う場合の分子特異性について検討したところ、AMPA電流成分も多少減少することが分かり、完全な分子特異性を見出すことはできなかった。その理由として、今回はわずか1クローンしかCALIが可能な抗体が得られなかったためであると考えており、今後は多くCALIが可能な抗体を単離することで改善できる可能性がある。
3: やや遅れている
CALIが可能な機能性抗体の開発はほぼ予定通り進んだが、今のところ高い特異性を持つとは認められていないため。
今後は多くのCALIが可能な抗体を単離することで、分子特異性の高い抗体を取得できると考えている。まずは内在性分子を認識する抗体をより多く単離する事が重要と考え、抗体取得方法をペプチド免疫からDNA免疫に変更することでこれを実現する計画である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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