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2016 年度 実績報告書

連合記憶想起における側頭葉サブ領域間神経回路の研究

公募研究

研究領域多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理
研究課題/領域番号 16H01281
研究機関順天堂大学

研究代表者

竹田 真己  順天堂大学, 医学部, 特任准教授 (00418659)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード長期記憶 / 側頭葉 / 電気生理学 / MRI
研究実績の概要

記憶の情報処理メカニズムに関して、皮質層レベルの情報処理(メゾスコピック)から関連領野間の情報処理(マクロスコピック)まで複数の空間スケールにおける情報処理に注目して研究を進め、論文発表を行った。
脳深部に関連領域が存在する連合記憶などの高次脳機能については、方法論的な限界があったために、皮質層構造が果たす役割はほとんど解明されていなかった。そこで、対連合記憶課題を遂行するサルを被験体として、微小電極記録法、MRIと組織切片法を組み合わせることによって、記録ニューロンの皮質層を同定した。実験の結果、側頭葉36野において、第5層に存在するニューロンが連合記憶を符号化する一方で、第6層のニューロンは想起された情報を出力することを明らかにした。これらの結果から、霊長類の大脳皮質において第5層から6層へと情報が受け渡される中で想起対象へと情報が変換される新規の情報処理過程が明らかになった(Koyano et al)。
次に、36野を含む側頭葉全体が記憶想起にどのような働きをしているのかについて調べた。新規に開発したECoG電極を用いて高密度皮質脳波を測定し、記憶想起信号の伝播過程を調べた。実験の結果、側頭葉から海馬にわたってシータ波帯域の特徴的伝播信号を同定し、この伝播信号が記憶想起に必要であることを明らかにした (Nakahara et al)。
さらに側頭葉を含む脳全体の記憶想起システムについても研究を行った。メタ記憶課題遂行中のサルのfMRIイメージングを行い、関連脳領域を同定した。同定した前頭葉部位のaPSPDおよびSEFaにムシモルを注入し神経活動を抑制するとメタ記憶課題の正答率が減少することが明らかとなった。本研究により、メタ記憶には前頭葉の複数領域の活性が必須であることが明らかとなった (Miyamoto et al) 。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績に記したように、2016年度は、3報の原著論文と1報の総説を執筆した。その他に、光遺伝学的手法をサルに応用するための技術的な開発を行った。ArchTを発現させたラット脳を用いて、光照射のための光ファイバー位置から電気生理学的に記録を行っているArchT発現ニューロンの距離を計測した。次に、その距離に応じて、神経活動抑制がどのような変化をするかを調べることで、広範囲の脳領域を効率よく神経攪乱させるための条件検討を行った(学会発表)。この技術開発と並行して、再認課題遂行中のサル側頭葉ニューロンの神経活動をChR2を用いて光遺伝学的に制御することで、再認パフォーマンスにどのような影響があるかを調べた。また、この研究のために、in vivoで蛍光強度を測定するシステムを開発し、課題遂行中にChR2発現ニューロン群に光が照射されているかを調べることを可能とした。これらの成果は、現在論文執筆中である。また、本研究課題で購入した器具などにより、側頭葉サブ領域群の同時記録及び光遺伝学的実験を実現する環境を整備中である。

今後の研究の推進方策

2016年度に整備した実験環境を用いて、記憶課題遂行中のサル側頭葉記憶関連サブ領域群からの同時記録及び光遺伝学的実験データを取得する。実験の際には、これまで行ってきた技術開発の知見を利用し、より効率よくデータ収集が行えるようにする。光照射による神経応答が十分に得られなかったり、サルの行動変化が認められなかった場合は、ウィルスを感染させる範囲や光刺激を行う範囲を拡大させることにより解決を図る。また、電気刺激による行動変化も計測し、光刺激による行動変化との比較を行う。
得られたデータは周波数解析や因果性解析などを用いて解析する。実験結果をまとめ、学会発表および論文発表を行う。また、研究室のHPやプレスリリースなどを用いて、積極的に研究成果を社会・国民に発信する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Causal neural network of metamemory for retrospection in primates2017

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, K., Osada, T., Setsuie, R., Takeda, M., Tamura, K., Adachi, Y., and Miyashita, Y.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 355 ページ: 188-193

    • DOI

      10.1126/science.aal0162

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Laminar module cascade from layer 5 to 6 implementing cue-to-target conversion for object memory retrieval in the primate temporal cortex2016

    • 著者名/発表者名
      Koyano, K.W., Takeda, M.*, Matsui, T., Hirabayashi, T., Ohashi, Y., and Miyashita, Y.*
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 92 ページ: 518-529

    • DOI

      10.1016/j.neuron.2016.09.024

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Associative-memory representations emerge as shared spatial patterns of theta activity spanning the primate temporal cortex2016

    • 著者名/発表者名
      Nakahara, K., Adachi, K., Kawasaki, K., Matsuo, T., Sawahata, H., Majima, K., Takeda, M., Sugiyama, S., Nakata, R., Iijima, A., Tanigawa, H. Suzuki, T., Kamitani, Y. and Hasegawa, I.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 7 ページ: 11827

    • DOI

      10.1038/ncomms11827

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 記憶を正しく思い出すための脳の仕組み2016

    • 著者名/発表者名
      竹田真己
    • 雑誌名

      BRAIN and NERVE

      巻: 68 ページ: 473-477

    • DOI

      10.11477/mf.1416200420

  • [学会発表] Efficient ArchT-mediated optogenetic inhibition by red-shifted off-peak 594-nm light in vivo2016

    • 著者名/発表者名
      Setsuie, R., Tamura, K., Takeda, M., Miyamoto, K., and Miyashita, Y.
    • 学会等名
      Society for Neuroscience
    • 発表場所
      San Diego
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-12
    • 国際学会
  • [学会発表] mechanism for successful memory recall: layer specific inter-areal circuit in temporal cortex2016

    • 著者名/発表者名
      Takeda, M.
    • 学会等名
      The 39th annual meeting of the Japan neuroscience society
    • 発表場所
      Yokohama
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-21
    • 国際学会
  • [備考] タイトル 記憶を思い出す際の脳の新たな仕組みを解明

    • URL

      http://www.juntendo.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00017685.pdf&n=NewsRelease20161007%E8%A8%98%E6%86%B6.pdf

  • [備考] Brain microcircuit for higher cognitive functions

    • URL

      http://www.juntendo.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00017732.pdf&n=PressRelease20161006%EF%BC%88English%EF%BC%89.pdf

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公開日: 2018-01-16  

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