研究実績の概要 |
1.ラットの記憶課題の決定:学習過程を見る複数の記憶課題について検討した。その結果、下記の記憶課題が実用的であることがわかり、今後活用していくことにした。 (1)共通の方法である基本課題として、周波数の異なる2種類の音と左右2箇所の穴との対応を記憶する条件性弁別課題を用いる。まず基本課題として音AとBを用い、音Aが提示された時は穴Lへ反応し、音Bが提示された時には穴Rへ反応することを訓練する。(2)基本課題をラットが十分習得した後、新たな周波数を持つ2種類の音(C, D)を用いた記憶課題Ⅰを訓練する。すなわち、音C → Lへ反応、音D → Rへ反応、という新たな音―場所の記憶を、3日ほどの訓練で形成できるように、音CとDの周波数の差を設定する。(3)記憶課題Ⅰを習得した後、新たな周波数を持つ2種類の音(E, F)を用いた記憶課題Ⅱを訓練する。そして、音E → Lへ反応、音F → Rへ反応、という新たな音―場所の記憶を、やはり3日ほどの訓練で形成できるように、2種類の音の周波数の差を設定する。(4)記憶課題Ⅱを習得した後、記憶課題Ⅰ(音C→Lへ反応、音D→Rへ反応)を1~2日間かけて再訓練する。 2.マルチニューロン活動の記録法の決定:前年度までに開発し改良した記録方法をさらに検討した。その結果、局所的な集団を構成する神経細胞の活動をもれなく検出し、記憶課題を学習する全プロセス(約10日間)を通じ、マルチニューロン活動を記録する方法を確立した。同時に、データの収集も開始した。 3.マルチニューロン活動の解析法の決定:これまで得られたデータについて多様な解析を試みた。その結果、ショットガン相関解析を中心とした解析法を確立した。また、セル・アセンブリを構成する神経細胞間の機能的結合の動的変化を同期発火に基づき正確に記述できる理論的モデルについても検討を進めた。
|