公募研究
すでに開発済みの複数の記憶課題、すなわち異なる音刺激対を用いた複数の条件性弁別課題を数日間にわたり次々と学習していくラットの海馬からマルチニューロン活動を記録し、異なる記憶の形成と再形成をとおして変化する神経細胞集団の発火頻度と同期発火について解析した。その結果、記憶課題Ⅱと記憶課題Ⅲの学習過程(Learn1とLearn2)それぞれにおいて、記憶が形成されつつある時期でのみ一過性の同期発火を示すニューロンペアがあり、そのペアはLearn1とLearn2で異なっていた。またそれら一過性の同期発火は、記憶が形成された学習完成期にはほぼ消失した。これらの結果から、以下の仮説を提示することができた。(1)海馬で一時的に作られるセル・アセンブリ(temporary cell assembly)によって記憶が作られ、その記憶は新皮質に移されることで固定される。(2)その記憶が固定されるに伴い海馬のセル・アセンブリはリセットされ、次の新しい記憶を形成する際には異なるセル・アセンブリがまた一時的に作られる。(3)このような海馬のセル・アセンブリの柔軟なセット・リセットにより、限られた神経細胞集団により多様な記憶を次々形成することが可能となる。また、これらの仮説を検証するため、新たなアデノ随伴ウイルスを用いたオプトジェネティクス法を開発した。この方法を活用することで、海馬のセル・アセンブリの活性化により新たな記憶課題の学習が促進されることを因果的に検証することが可能となった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
巻: 94 ページ: 1248~1262.e4
10.1016/j.neuron.2017.05.024
https://www1.doshisha.ac.jp/~ysakurai/