研究領域 | 動的クロマチン構造と機能 |
研究課題/領域番号 |
16H01303
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 彰二 京都大学, 理学研究科, 教授 (60304086)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヌクレオソーム / エピジェネティック / 分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、独自の分子シミュレーション技法によって、次の課題に取り組んでいる。〇ヘテロクロマチン蛋白質HP1によるメチル化ヒストン認識の動構造解析、〇熱揺らぎによるヌクレオソームスライディングの構造転移解析、〇ヌクレオソームからのヒストン放出の動構造解析。 〇ヘテロクロマチン蛋白質HP1によるメチル化ヒストン認識の動構造解析:HP1はヒストンH3K9me3を認識しヘテロクロマチン化に寄与する。ヌクレオソーム環境下でのHP1の動構造は未解明である。本研究では、オープンな高次構造をとるジ・ヌクレオソーム環境下の2量体HP1α及びγの結合モードを解析し、HP1α二量体が、二つのヌクレオソームのH3テールとそれぞれ結合するモードが支配的であることを見出した。このモードを好む理由は、HP1αが有するリンカー領域の3つの塩基モチーフがリンカーDNAと親和性が高い点にあることが分かった。生化学実験(共同研究)で、そのモチーフを消失されるとHP1αのジヌクレオソームへの結合は顕著に弱くなった。 〇熱揺らぎによるヌクレオソームスライディングの構造転移解析:まず、周期2の単純塩基配列をもつ2本鎖DNAについて、粗視化分子シミュレーションを用いて、ヌクレオソームスライディングを調べると、2本鎖DNAの長軸周りの回転と共役したスライディングが主たる機構であった。ヒストン周りのDNAは比較的稀に、1塩基対分伸びたり縮んだりして、defectを生成し、そのdefectが間欠的に遷移することが見いだされた。Widom 601配列のようにヒストン8量体と親和性の高い塩基配列の場合は、回転共役型のスライディングとともに、回転を伴わない10塩基(中間状態として5塩基も見られる)遷移が見られる。どちらがより頻度が高いのかは、塩基配列等によって変化しうることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロクロマチン蛋白質HP1とヌクレオソームスライディングについて、予想を超えるほどに顕著な進捗があった。一方、ヌクレオソームからのヒストン放出に関しては、まだ課題が多く、計算は軌道に乗っていない。総合してみると、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、HP1のより詳細な動態解析、リモデラーやRNAポリメラーゼの効果によってヌクレオソームからヒストンが放出される過程など、ヌクレオソームが関連するより動的な過程を分析する。
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