研究実績の概要 |
私たちは、分裂酵母の減数分裂において、非コードRNA であるmeiRNAが染色体の特定の部位sme2遺伝子座に蓄積し、減数分裂に必須な相同染色体の対合に寄与することを発見した。本研究は、染色体上のsme2遺伝子座に蓄積したmeiRNAの結合タンパク質を同定し、その役割を理解することによって、クロマチン機能における非コードRNAの機能を明らかにすることを目的とする。 これまでに、分裂酵母のGFP融合タンパク質ライブラリを利用してmeiRNAと共局在する因子を検索し、減数分裂期に特有に染色体上のsme2遺伝子座に蓄積するタンパク質の候補を同定した。蛍光融合タンパク質の局在を顕微鏡で検索することによって、sme2遺伝子座に蓄積する因子を10個選別し、sme2 RNA binding protein (Smp)と名付けた。さらに、ゲノムワイドに約100kbp間隔でlacOリピート配列を挿入した一群の細胞株を作成した。これを用いて、コヒーシンなどの変異体でクロマチン構造をイメージングすると共に、sme2遺伝子座の対合への影響を解析した。平成28年度は、高分解能でクロマチン構造を観察するために、超分解能顕微鏡法として3D-SIM (Structured Illumination Microscope)を用い、分裂酵母のクロマチン構造の解析を可能にした(Matsuda et al., Yeast, 2016)。これによりコヒーシンが作るクロマチン構造が相同染色体対合に必須であることを示したDing et al., Chromosoma, 2016; Ding et al., Curr. Genet., 2016)。また、分裂酵母のヒストンを用いたヌクレオソーム再構成を実現し、その生化学的特性を解析した(Koyama et al., BBRC, 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GFP融合タンパク質ライブラリを利用したmeiRNA共局在因子の網羅的的解析により、meiRNAと共局在する因子を選別することができ、さらにこの中から相同染色体の対合に影響する因子を同定した結果、polyA付加などRNA代謝反応に関与するタンパク質が得られた。また、ゲノムワイドに約100kbp間隔でlacOリピート配列を挿入した一群の細胞株を作成したことにより、染色体の約130箇所を生細胞可視化した。このような細胞株は、本課題の目的だけでなく、染色体のダイナミクスを研究する様々な実験に活用できる有用な資源となっている。 このような染色体と細胞核ダイナミクスの研究の成果を国際学術誌に発表するとともに、超分解能顕微鏡法3D-SIM技術支援や分裂酵母の生物資源の共用を通して、領域内連携に貢献している。胡桃坂らとの領域内連携として、分裂酵母のヒストンを用いたヌクレオソーム再構成を実現し、その生化学的特性を解析し、論文を発表した(Koyama et al., BBRC, 2017)。さらに木村らとの領域内連携として、ヒストン修飾の可視化に関する論文を発表した(Sato et al., J. Mol. Biol., 2016)。 これらのことから、研究はおおむね順調に進展している。
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