研究実績の概要 |
分裂酵母の減数分裂において相同染色体が対合する仕組みの研究を行い、非コード RNAが相同染色体を認識し対合を促進する分子基盤の一端を明らかにした。非コードRNAとしてsme2遺伝子から転写されるsme2 RNAに着目し、sme2 RNAと相互作用するタンパク質を探索した。GFP融合タンパク質ライブラリーを用いて、sme2 遺伝子領域に局在するタンパク質を蛍光顕微鏡によるビジュアルスクリーニングを行った結果、10種類のsme2 RNA結合タンパク質を同定した。これらのsme2 RNA結合タンパク質は、染色体上でsme2遺伝子領域を含む3箇所の染色体領域に局在した。sme2遺伝子領域以外の2つの染色体領域を特定するために、生化学的なChIP-seq解析(クロマチン免疫沈降産物に含まれるDNAの塩基配列解析)などを行ったが、染色体領域を特定することができなかった。そこで、分裂酵母ゲノムの150箇所の場所それぞれにlacOリピートを挿入した株を活用し、ビジュアルスクリーニングを行った。これら一群の株においては、lacOリピートが互いに約100kb離れた間隔で、ゲノム全体にわたり挿入されており、lacI-GFPで緑色に染まる。それぞれの株でmCherry を融合したsme2 RNA結合タンパク質(赤色)を観察し、共局在を示すlacO挿入部位を特定する。このビジュアルスクリーニングにより、sme2遺伝子領域を含む3箇所の染色体領域を特定することに成功した。この新たに見つかった領域は、sme2遺伝子領域と同様に、sme2 RNA結合タンパク質に依存して、相同染色体対合の頻度が上昇することがわかった(未発表、投稿準備中)。 また、クロマチン構造形成と機能におけるヒストンバリアントの役割(Yamada et al, Nucleic Acids Research 2018)や非コードRNAの役割(Kajitani et al, Proc Natl Acad Sci USA 2017)、核膜タンパク質の役割(Yang et al, J Biochem 2017; Hirano et al, Genes Cells 2018)を明らかにした。
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