研究実績の概要 |
てんかん病態において、病態の進行に伴う薬物治療抵抗性の獲得要因の一つは、血液脳関門Blood-brain barrier (BBB)の機能変動であるとの説が提唱されている。この学説は、神経活動とBBB輸送機能との機能的連関を示唆している。その中で、アストロサイトは、解剖学的に脳血管に接しており、BBBの機能を制御していることが明らかにされてきた。しかし、てんかん病態におけるBBBの機能変化に対して、アストロサイトが果たす役割は不明である。そこで本研究では、標的絶対定量プロテオミクス(Quantitative Targeted Absolute Proteomics, QTAP)と網羅的定量プロテオミクス(SWATH法)を用いて、神経活動-BBB機能連関におけるアストロサイトの役割を分子的に解明することを目的とした。てんかんモデルの脳組織から脳血管(glio-vascular unit)を高純度で単離する手法を確立し、トランスポーター/チャネルの量的発現変化を、標的絶対定量プロテオミクスを用いて明らかにした。さらに、高感度高分解能の質量分析装置による網羅的定量プロテオミクスを用いて、血管-アストロサイトの動的調節機構を解明するために、チャネルのリン酸化/非リン酸化タンパク質の変動を一斉定量する系を確立した。今後は、てんかん病態においてタンパク質の質的量的変化が、glio-vascular unitにおける動的調節機構を担っていることを実証する計画である。
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