公募研究
ミクログリアは胎生期卵黄嚢で発生する前駆細胞を起源とする脳常在マクロファージであり,脳内環境の恒常性や維持に重要な働きを担っている。ミクログリアが有する生理的機能の喪失により神経軸索傷害や髄鞘損傷が生じ,大脳白質変性が惹起されることが知られている。このようなミクログリアの本質的機能の障害による大脳白質変性症は「一次性ミクログリア病」と呼ばれ,神経軸索スフェロイドを伴うびまん性白質脳症(hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids)や那須-ハコラ病などの疾患がその例として知られている。HDLSの原因遺伝子はミクログリアに強く発現するコロニー刺激因子1受容体(CSF1R: colony stimulating factor 1 receptor)である。疾患に関連する変異はCSF1Rチロシンキナーゼ領域に存在する。本研究では,CSF1R変異体がミクログリアに及ぼす影響に着目し,ヒト剖検脳を用いた解析を進めている。平成28年度はHDLS患者の遺伝子解析により新規CSF1R変異を5つ同定した。これらの変異体を発現する細胞では,リガンド(CSF1R/IL34)刺激依存性に誘導されるCSF1R自己リン酸化が障害されていた。HDLS患者剖検脳から界面活性剤を用いて可溶化タンパクを抽出し,CSF1Rおよびミクログリア関連マーカーの発現を明らかにした。ミクログリア関連マーカーとしては,DAP12,CD11bの特異抗体を用いたウエスタンブロット解析を行い,HDLS患者脳ではこれらのマーカーが低下していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
新規CSF1R変異体の機能アッセイを行い,その病原性が確認できた。HDLS剖検脳組織由来のCSF1R及びミクログリアマーカーの変化を明らかにした。
平成29年度は新規に同定したCSF1R変異体をミクログリアに導入し,ミクログリアの機能アッセイを行う。HDLS患者由来生体試料を用いた網羅的な発現変動を解析し,ミクログリア関連分子パスウェイの変化を明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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