公募研究
酸性スフィンゴ糖脂質、ガングリオシドは神経組織の維持や修復に関与することが分かってきたが、その分子メカニズムについては不明な点が多い。一方、ガングリオシドは、様々な細胞膜上シグナル伝達や細胞間相互作用を調節しているが、これらの調節機能は主に細胞膜上のミクロドメイン(脂質ラフト)にて行われている。しかし、神経組織におけるガングリオシドの機能は一局面に限られており、その役割には未だ不明な点が多い。WTマウス由来の初代培養アストロサイトのガングリオシドの細胞膜への発現をFACSにて検討した所、脳組織で発現しているガングリオシド(GM1やGD1a、GD1b、GT1bなど)が高発現していた。これはアストロサイトにおいても脂質ラフトの構築にガングリオシドが関与している事を示唆している。また、ガングリオシド欠損初代培養アストロサイトではグルタミン酸取り込みが低下した。アストロサイトにおけるガングリオシド発現パターンをflow cytometerを用いて解析した結果、正常アストロサイトにおいては、ガングリオシドGD3の発現がほとんど見られなかったが、増殖因子の一つであるPDGFBを強制発現させることによりGD3の発現誘導が起こることが明らかになった。また、スクロース濃度勾配超遠心法を用いて、WTとガングリオシド欠損アストロサイトから脂質ラフトとそれ以外の画分に分離した結果、WTアストロサイトでは脂質ラフトが構築されていたのに比べ、ガングリオシド欠損アストロサイトでは脂質ラフトの構築異常が見られた。細胞外グルタミン酸濃度の制御に重要な分子であるグルタミン酸トランスポーター(EAAT1/2)は脂質ラフトに局在しているという報告があるが、ガングリオシド欠損によってEAAT1/2の細胞膜上での変化は検出できなかった。今後は、より高感度のEAAT1/2の検出条件を検討する。
3: やや遅れている
糖転移酵素遺伝子欠損マウスのシナプスから目的とする脂質ラフトを検出できず、回収量や回収方法の条件検討を行なっている。また、それに合わせて、脂質ラフトに局在する細胞外グルタミン酸濃度の制御に重要な分子であるグルタミン酸トランスポーター(EAAT1/2)の高感度検出条件を検討する。ガングリオシドGD3発現アストロサイトの脂質ラフト近傍に局在するタンパク質の検出を企図して、EMARS(enzyme-mediated activation of radical sources)及びMS(mass spectrometry)を用いて解析を行っている。
平成29年度計画にあるようにアストロサイトのガングリオシドにおける脂質ラフト機能解析を行うため、ガングリオシドGD3発現アストロサイトの脂質ラフト近傍に局在するタンパク質の検出をEMARS(enzyme-mediated activation of radical sources)及びMS(mass spectrometry)を用いて解析し、その近傍タンパク質の機能を明らかにする。
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