研究実績の概要 |
霊長類におけるグリアアセンブリによる脳機能成熟機構に迫るため、MACS(Magnetic-activated cell sorting)による霊長類(ニホンザル、アカゲザル)グリア細胞の分離とRNAseqによる発現遺伝子の網羅的解析を試みた。まず、出生直後のニホンザルまたはアカゲザル合計3個体から新鮮な脳組織を単離し、プロテアーゼを付加したdissociation buffer中でホモジナイズすることにより、細胞を分離した。その後、anti-GLAST、anti-O4、そしてanti-CD11b抗体を結合したビーズにより、それぞれアストロサイト、オリゴデンドロサイト、そしてミクログリアを単離することを試みた。固定していない新鮮な脳組織を計画的に取得することが困難な場合が多いため、新鮮なうちに一旦凍結した組織から細胞を単離した結果、効率は低いながらもそれぞれの抗体に反応する細胞を捕集し、RNAを抽出することができた。現在、これらの細胞に発現する遺伝子について、RNAseqによる網羅的な解析を行っている。 また、これまでに同定した遺伝子変異ニホンザル(N2006等 、ニホンザルバイオリソース由来、BCR, LOC709740, CYTSA, ADORA2A, UPB1, C22orf13, SNRPD3, LOC708086, GGT1のduplication等)の細胞レベルでの表現系解析のため、ニホンザル線維芽細胞からの幹細胞作成とニューロン・グリアへの分化誘導を試みている。ヒトやチンパンジーの線維芽細胞に比べるとニホンザルの線維芽細胞は遺伝子導入効率が悪く、初期化が困難であったが、ウイルスベクターを用いることにより、iPS細胞は作成できた。
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