ニホンザル・マーモセットなどの非ヒト霊長類をモデルとしたグリアネットワークの研究基盤を構築した。(1)遺伝子多型がもたらす表現型の解析と(2)幹細胞システムの利用による遺伝子変異個体の解析と保存と通じて、分子エビデンスに基づくモデルサルの探索を行った。 (1)については前年度までに、磁気結合細胞分離法(MACS)で各種グリア細胞をニホンザルやアカゲザルの脳から単離し、RNAseqにより発現遺伝子を同定することに成功した。そこで本年度は、さらにサンプル数を増やしてこれらの結果の再現性をチェックすると共に、同定されたグリア特異的な遺伝子の多型解析を進めた。約100個体(ニホンザル、アカゲザル等)の霊長類血液由来ゲノムDNAサンプルより個体ごとにラベルをつけて単離し、次世代シークエンサーによりアミノ酸変異や挿入欠失等を検討した。その結果、グリアに発現する遺伝子の変異(染色体の大規模重複や数種類の遺伝子のSNP)を同定した。また、(2)についてはこれらの遺伝子変異の影響をiPS細胞からグリア細胞に分化誘導する系を用いて評価を行った。特にドイツとの共同研究により効率的に分化誘導する系が確立しつつある。この実験系や直接動物から採取した脳サンプルを分画した系を用いて、変異個体における遺伝子変異の発現に与える影響を評価することが可能になった。その結果、野生型に比べて遺伝子変異のある個体は、グリアに発現するいくつかの遺伝子の発現量が変化することがわかった。
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