研究領域 | グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態 |
研究課題/領域番号 |
16H01342
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
竹居 光太郎 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (40202163)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LOTUS / ミエリン / 軸索伸長 / 神経再生 / PirB |
研究実績の概要 |
神経回路形成因子LOTUSは中枢神経系の再生を阻む主要因であるNogo receptor-1(NgR1)とPaired immunoglobulin-like receptor B(PirB)と結合し、これらの受容体機能を抑制するアンタゴニスト活性を有する一方、LOTUSは神経細胞のみならずミエリン膜上にも発現し、培養基質として培養皿にコートしたLOTUSや培養液に添加したLOTUSは培養神経細胞の軸索伸長を著しく促進する。即ち、LOTUSは軸索伸長を促進する神経細胞とオリゴデンドロサイト間の相互作用分子として位置づけられるため、本研究ではLOTUSのNgR1とPirBに対する拮抗作用がもたらす軸索伸長作用とLOTUSの直接的な作用による軸索伸長作用の双方を解析し、LOTUSを介した神経細胞とオリゴデンドロサイト間の相互関係の制御による神経回路成熟機構の解明を目的とする。 H28年度では、(1) PirBリガンド分子とPirBとの結合に対するLOTUSの拮抗作用の検討した。COS7細胞株にPirBを強制発現させてLOTUSの拮抗作用が判明していないPirBリガンド分子(MAGとOMgp)のPirBに対する拮抗作用について検討したところ、MAGとPirBの結合においてはLOTUSは抑制しなかった。また、OMgpにおいては、既報とは異なり、我々の実験系ではPirBとの相互作用が確認できなかった。 次に、(2)培養神経細胞におけるPirBに対するLOTUSの拮抗作用の検討を行った。PirBが高発現し、LOTUSの発現が極少である後根神経節細胞において、NgR1-KOマウスを用いて、上記のPirBリガンド分子・PirB相互作用により誘起される軸索伸長阻害に対するLOTUSの拮抗作用を検討したところ、Nogoによって抑制された神経突起伸長がLOTUSの強制発現および投与によってレスキューされ、Nogoの作用を抑制することが判明した。現在、PirBとLOTUSの相互作用によるNogoに対する拮抗作用であることを検証するため、同様の実験系においてPirBに対するshRNAを作製し、PirBノックダウン実験を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成28年度計画にある(1)「PirBリガンド分子とPirBとの結合に対するLOTUSの拮抗作用の検討」においては、ほぼ完了した。ただし、既報にあるOMgpとPirBの相互作用については、既報と全く同じ実験を追試したが再現できなかった。更に、OMgpを大量精製するために必要なタグの挿入位置を様々な位置で作製したリコンビナントタンパク質において、全ての条件で相互作用が見られなかった。既報のデータを他者が更に追試して検証する必要があると思われる。 また、(2)「培養神経細胞におけるPirBに対するLOTUSの拮抗作用の検討」においては、培養後根神経細胞を用いた実験においては概ね終了し、得られたデータをshRNAを用いたノックダウン実験で検証する段階に到達した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度計画にある以下の実験研究を開始する。軸索伸長作用を起す神経細胞上の未知のLOTUS結合分子を同定するため、1)マウス網膜神経節細胞のcDNAライブラリーを用いた同定、および2)生化学的手法(プルダウン法)によって採取したサンプルにおけるプロテオミクス手法を用いた同定の双方を試みる。また、ミエリン膜上のLOTUSを介した軸索伸長の可能性について、野生型マウスとLOTUS-KOマウスから各々調製したミエリン分画を培養基質として網膜神経節細胞を培養し、野生型マウス由来のミエリン分画上で培養された神経細胞に対しては上記で同定されたLOTUS結合分子のRNAiによるノックダウンを行ってLOTUSと当該分子の相互作用で軸索伸長が生じることを検証する。これらの実験研究によってミエリン膜(オリゴデンドロサイト)上のLOTUS分子と、神経細胞上のLOTUS結合分子との相互作用によって神経突起伸長が誘起される新しい軸索伸長機構を解明する。
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