研究実績の概要 |
高次脳機能に異常を呈する発達障害・精神疾患の病態の解明および治療法の開発は喫緊の課題である。近年、体循環系の炎症が脳機能と相関することが着目されている。すなわち、発達障害・統合失調症と腸内細菌・母胎感染・炎症性疾患との相関や歯周炎と認知機能障害の関係などが知られている。そこで中枢神経系の免疫細胞であるミクログリアに着目し、その新規生理機能を明らかにするとともに機能破綻によって引き起こされる脳機能異常を明らかにする。これまで私たちはミクログリアが1時間に1度5分程度ミクログリアがシナプスに接触することによって、ミクログリアがシナプス活動を監視すること(Wake et al., J. Neurosci 2009.)および発達早期においてミクログリアが活性化体であることに着目し、そのシナプスの形成を促進する生理機能があることを明らかにしてきた (Miyamoto et al., 2016, Nature Commun)。さらにミクログリアの活性化を誘導することによってレバー引きによる水報酬学習の運動学習障害が起きること、またその神経回路基盤としてレバーを引くという行動にトリガーして発火する神経細胞のポピュレーションが低下することがわかった。さらにdayXにおいてレバー引きにトリガーして発火する神経細胞のポピュレーションは、次のdayX+2において上昇するレバー引きの成功率と相関することから、レバー引きに同期して発火する神経細胞のポピュレーションが低下することが学習効率を阻害することが明らかとなった。このような異常はミクログリアを除去した後際にも同様に認められたため、ミクログリアの生理機能が異常な体循環系免疫細胞との相関で失われ、神経回路活動の異常を引き起こすことが明らかとなった。さらにこのミクログリアの生理機能として接触によるシナプス活動修飾を明らかにした
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