脳はその主要な構成要素であるニューロンとニューロン同士のネットワーク(神経回路)の産物であり,その全容を解明しようとする研究が現代脳科学において趨勢を占めている.しかし,皮質内にはニューロンよりも多くのグリア細胞が存在し,グリア細胞が占める割合はヒトに至る進化の過程で増大することが知られている.そこで,本研究では,領野の機能局在化がげっ歯類と比べてより顕著なマカクザルを用いて,ニューロン間の機能的神経回路とそれをささえるグリア細胞(アストロサイト・オリゴデンドロサイト・ミクログリア)との相互作用(アセンブル)を.発達・成熟の時間軸と領野間・細胞種間の空間軸において,細胞種ごとに遺伝子発現プロファイリングを行うことでその動態変化を解明することを目的とした. マカクザルの凍結脳組織よりフローサイトメーターを用いて細胞種ごとに細胞を分取すること,さらに単一細胞ごとの発現動態を高精度にかつハイスループットで取得することを目的として,自然科学研究機構基礎生物学研究所が共通機器として保有しているフローサイトメーターのアップグレードを行った.このアップグレードにより1度のソーティングで最大96の単一細胞の取得が可能になった. 他の科研費との重複制限により3ヶ月という短期間の研究実施期間しかなかったため,具体的な研究の進展が図れなかったが,本科研費により高精度にニューロン・グリアアセンブル動態を理解する研究インフラを整えることが可能になった.今後は,本研究計画をさらに推進し,単一細胞レベルでのニューロン・グリアアセンブル動態解明に向けた実質的な研究を推進する体制を早急に整えたいと考えている.
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