研究領域 | 脂質クオリティが解き明かす生命現象 |
研究課題/領域番号 |
16H01354
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小川 佳宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70291424)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / ω-3多価不飽和脂肪酸 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
平成28年度は、妊娠期から授乳期の母体が、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid: EPA)やドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid: DHA)などのω-3多価不飽和脂肪酸(ω-3PUFA)を多く摂取すると、児の肝臓での代謝機能が向上するか否かを明らかにするために、マウスを用いて以下の実験を行った。C57BL/6J妊娠母獣マウスを3群に分け、妊娠16日目からコントロール食(10 kcal% 脂肪・17 kcal% ショ糖含有飼料)、飽和脂肪酸に富む高脂肪ラード食あるいはω-3PUFAに富む高脂肪魚油食(45kcal%脂肪・17 kcal% ショ糖含有飼料)を給餌した。出生後13日目における各群の産仔マウスから血液、肝臓、脂肪組織(皮下脂肪組織と内臓脂肪組織)、胃内容物を採取した。その結果、各群の母獣マウスの食餌摂取量には有意差はなかった。出生後13日目の各群の産仔マウスの体重と肝臓重量にも有意差は認められなかった。DNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析では、高脂肪魚油食群の産仔マウスではコントロール食群や高脂肪食ラード食群と比較して肝臓における脂肪酸β酸化関連遺伝子が有意に増加しており、なかでもCPT1とACOX遺伝子発現が著しく増加していた。以上により、妊娠期から授乳期に母獣マウスがω-3PUFAを多く摂取すると産仔マウスの肝臓における脂肪酸β酸化が亢進することが示唆された。現在胃内容物を用いて母獣マウスの乳汁の脂質成分をガスクロマトグラフィー法にて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、妊娠期から授乳期のマウス母獣が、ω-3PUFAを多く含有する魚油食を摂取すると、産仔マウスの肝臓での脂肪酸β酸化機能が亢進することを示唆するデータが得られた。肝臓についてはDNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析も実施できた。脂肪組織の解析および、母乳の成分解析も順次進んでおり、実験計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は平成28年度に採取した各組織における遺伝子発現をDNAマイクロアレイで網羅的に解析するとともに、次世代シークエンサーを用いたReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)法により産仔マウスの肝臓、脂肪組織より抽出したゲノムDNAを用いて、DNAメチル化変化を網羅的に解析する。さらに妊娠期~授乳期に、ω-3PUFAを多く含有する魚油食を摂取した母獣マウスが出産した産仔マウスの成獣期における肝臓、脂肪組織の代謝機能を解析するために、平成28年度に実施した上記の実験を再施行する。その上で糖脂質代謝パラメーター(体重、肝重量、血糖、インスリン、コレステロール、中性脂肪など)を測定する。高脂肪食負荷に対する体重増加や糖脂質代謝の変化を検討する。
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