研究実績の概要 |
本研究課題として、腸内細菌による脂肪酸代謝物群の脂肪酸受容体を介した宿主エネルギー代謝に与える影響について検討を行った。脂肪酸代謝物によるエネルギー代謝ネットワークへの関与解明を目指し、生体細胞膜上脂質受容体GPCR、脂肪酸受容体群に着目し、我々の得意とする脂肪酸受容体-リガンドスクリーニングアッセイおよび各種脂肪酸受容体遺伝子改変マウスを用いた生体生理機能解析を行った。結果、長鎖脂肪酸受容体であるGPR40, GPR120を介した血糖上昇抑制作用の分子メカニズムを明らかにした。さらにリノール酸の腸内細菌代謝脂肪酸であるHYAの長期投与は高脂肪食誘導肥満に対して抵抗性を示した。加えて、内因的な腸内細菌からのリノール酸-HYA変換が宿主側の恒常性維持に重要であるかを無菌マウスとノトバイオート実験により検討を行った。また、我々の有するGPR40KOマウスやGPR120KOマウスを用いてHYAによる代謝機能改善効果について、同様の検討を行うことによって、HYAの作用標的受容体の特定とその分子メカニズムの確定を行った。また、短鎖脂肪酸受容体GPR43が腸内細菌産生代謝物によりマクロファージからの脂肪組織慢性炎症に関わることを明らかにした。脂質ステロイドホルモン、プロゲステロンの新規細胞膜受容体がGPCRではない生理活性を有することを証明した。以上の研究成果により、脂肪酸を対象とした代謝疾患解明や脂肪酸受容体を標的とした創薬応用のみならず、“医食同源”の概念による生活習慣病や免疫疾患を対象とした機能性食品応用への新たな知見を提供するものと期待される。
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