公募研究
網膜変性疾患の一つである難病、クリスタリン網膜症に対して、培養細胞や疾患iPS細胞を用いた病態メカニズム解明を行った。1)培養細胞を用いたCYP4V2機能解析:クリスパー・キャスシステムにより、クリスタリン網膜症の原因遺伝子であるCYP4V2遺伝子ノックアウト株を樹立した。ノックアウト細胞では、空胞変性が見られ、細胞増殖が極めて不良であった。野生型CYP4V2遺伝子を再導入すると、その表現型は軽快した。2)患者および健常人iPS細胞樹立:CYP4V2変異をホモにもつクリスタリン網膜症患者および健常人各4名から同意を得て、iPS細胞を樹立した。3) 患者iPS由来網膜色素上皮細胞の形態・機能解析:クリスタリン網膜症患者・健常者由来iPS-RPEにおいて、敷石状形態やタイトジャンクションの形成に異常はなかった。長期培養にて、患者由来iPS-RPEでは、空砲上変性を認め、また、増殖能の低下、死亡率の上昇を認めた。さらに、患者由来iPS-RPEでは、蛍光標識人工ビーズや視細胞外節の貪食およびその消化が遅延することが明らかになった。4) 患者iPS由来網膜色素上皮細胞を用いたメタボローム解析:CYP4V2は脂質代謝にかかわるとされ、網膜色素上皮は視細胞外節を貪食し脂質のリサイクルを行う細胞であることから、患者・健常者由来iPS-RPE各3株を用いて、脂質プロファイルをLC-MS/MSによる一斉分析法を行った。その結果、患者由来細胞では糖セラミドが増加していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初研究計画通りに実験を遂行し、その結果が得られたため。
当初計画通り、平成29年度は、患者iPS-RPEを用いて、遺伝子発現を明らかにし、遺伝子治療の可能性を探るとともに、新たな脂質補充療法の可能性を探る。研究連携者、協力者ともに昨年度と変更はなく、予定通り、研究推進が可能であると考えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)
Sci Rep
巻: 7 ページ: 44873
10.1038/srep44873.
巻: 6 ページ: 31184
10.1038/srep31184.
Heliyon
巻: 2 ページ: e00096
10.1016/j.heliyon.2016.e00096. eCollection 2016.
https://sites.google.com/site/lipoqualityjpn/public-offering-study/1701