• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実績報告書

酸化リン脂質代謝フラクソーム解析を用いたオキシリポクオリティ制御機構の解析

公募研究

研究領域脂質クオリティが解き明かす生命現象
研究課題/領域番号 16H01367
研究機関北里大学

研究代表者

今井 浩孝  北里大学, 薬学部, 教授 (50255361)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードフラクソーム / オキシリポクオリティ / GPx4 / SMS2 / 心筋初代培養 / ビタミンE / 重水素型PCOOH
研究実績の概要

GPx4は生体膜のリン脂質ヒドロペルオキシドをグルタチオン依存的に還元する酵素である。GPx4欠損MEF細胞や心臓特異的GPx4欠損マウスは脂質酸化を伴った新規細胞死が誘導されるが、ビタミンEの添加により新規細胞死が抑制できる。このように生体膜の酸化リン脂質の生成(オキシリポクオリティ)の変化は細胞死などの細胞機能に影響を与える。本研究では、リン脂質ヒドロペルオキシド(PCOOH)がどのように細胞死などの細胞機能に影響を与えるか、また生体系はどのような酸化リン脂質の代謝機構によりオキシリポクオリティを制御しているのかを明らかにするために、主に重水素型のリン脂質ヒドロペルオキシドの合成系の構築とその代謝機構について解析を行った。まずGPx4欠損細胞死において遺伝子の発現の上昇が見られたスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)2を、高発現した細胞を作成したところ、GPx4欠損細胞死を抑制できることを見出した。この機能はSMS1には見られなかった。またSMS2活性中心の変異体は致死抑制効果がないことから、SMS活性が必要であることが明らかとなった。重水素型PCOOHを用いてSMS活性を測定したところ重水素型SMに変換できることが確認できた。この酸化リン脂質代謝活性はSMS1にはなかった。このことからSMS2が新規の酸化リン脂質代謝酵素であることを初めて明らかにできた。また重水素型PCOOHの効率の良い合成系も構築できた。さらにオキシリポクオリティ変化による細胞機能解析ツールとして、これまで困難であった心筋初代培養GPx4欠損細胞の協調的拍動機能解析モデルの構築に成功した。心筋細胞の協調的拍動形成や拍動維持にはGPx4あるいはビタミンEが必須であることから、オキシリポクオリティの変化は心筋拍動に重要な影響を与えることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重水素型PCOOHを用いた酵素ライゼートを用いたフラクソーム解析から、酸化リン脂質の新たな代謝酵素としてSMS2を見出すことに成功した。PCOOHからSMへの変換活性は、同じファミリー分子であるSMS1には酵素活性がないことを見出した。SMS1やSMS2はPCをSMへ変換する活性を有するが、PCOOHを変換できるのはSMS2だけであることは極めて興味深い発見である。またこの代謝経路はこれまで全く報告されていない酸化りん脂質代謝系である。このように重水素型PCOOHを用いたフラクソーム解析が新たな酸化リン脂質の代謝系の発見に有用であることが証明できた。また重水素型PCOOHの新たな合成系の構築もできたため、研究は概ね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

重水素型PCOOHや重水素型PCを用いた多様な分子種の構築を進める。また重水素型PCの酸化による多様な酸化体を作成し、SMS2がどの酸化PC分子種を変換できるのか、特にPCアルデヒドやPCカルボン酸体の変換も可能であるのかについて解析を進める。また、実際に細胞に添加した際のフラクソーム解析も進め、PCOOHの新たな酸化代謝経路について明らかにしたい。GPx4欠損細胞死を制御できるLipo遺伝子のノックダウン細胞を用いて、重水素型PCOOHや重水素型PCの代謝にどのような影響が見られるのかについても解析を進める予定にしている。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Lipid peroxidation-dependent cell death regulated by GPx4 and Ferroptosis.2017

    • 著者名/発表者名
      Imai H., Matsuoka M., Kumagai T., Sakamoto T., Koumura T.
    • 雑誌名

      Curr Top Microbiol Immunol.

      巻: 403 ページ: 143-170

    • DOI

      10.1007/82_2016_508.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Role of GPx4 in human vascular endothelial cells, and the compensatory activity of brown rice on GPx4 ablation condition.2017

    • 著者名/発表者名
      Sakai O, ,Yasuzawa T,, Sumikawa Y,, Ueta T,, Imai H,, Sawabe A,, Ueshima S.
    • 雑誌名

      Pathophysiology.

      巻: 24(1) ページ: 9-15

    • DOI

      10.1016/j.pathophys.2016.11.002.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Role of Glutathione Peroxidase 4 in Corneal Endothelial Cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Uchida T,, Sakai O,, Imai H,, Ueta T.
    • 雑誌名

      Curr Eye Res.

      巻: 42(3) ページ: 380-385

    • DOI

      10.1080/02713683.2016.1196707

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Role of glutathione peroxidase 4 for oxidative homeostasis and wound repair in corneal epithelial cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Sakai O., ,Uchida T., ,Imai H., Ueta T.
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 6(12) ページ: 1238-1247

    • DOI

      10.1002/2211-5463.12141.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] GPx4により制御される脂質酸化依存的細胞死とフェロトーシス2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝
    • 雑誌名

      実験医学 増刊 細胞死 新しい実行メカニズムの謎に迫り疾患を理解する

      巻: Vol.34 No.72 ページ: 37-46

    • 査読あり
  • [学会発表] 脂質酸化依存的新規細胞死―フェロトーシスとGPx4欠損細胞死―における鉄の役割2017

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝
    • 学会等名
      日本薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台国際センター ( 宮城県 仙台市)
    • 年月日
      2017-03-27
  • [学会発表] 初代培養心筋細胞における協調的拍動形成におけるPHGPxとビタミンEの重要性2017

    • 著者名/発表者名
      中曽根美咲、幸村知子、今井浩孝
    • 学会等名
      日本薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台国際センター ( 宮城県 仙台市)
    • 年月日
      2017-03-25
  • [学会発表] SMS2過剰発現細胞における脂質酸化依存的新規細胞死抑制機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      熊谷剛、大矢梨里香、部坂由衣、坂本太郎、馬場直道、今井浩孝
    • 学会等名
      日本薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台国際センター ( 宮城県 仙台市)
    • 年月日
      2017-03-25
  • [学会発表] GPx4に制御される脂質酸化依存的新規細胞死(フェロトーシス様細胞死)と疾患2017

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝
    • 学会等名
      第4回 JFAS(Japan/Joy of Fatty Acids Secrets/Society)
    • 発表場所
      富士ソフトアキバプラザ (東京都 千代田区)
    • 年月日
      2017-03-05
    • 招待講演
  • [学会発表] 初代培養心筋細胞における協調的拍動形成におけるPHGPxとビタミンEの重要性2017

    • 著者名/発表者名
      中曽根美咲、細金美緒、幸村知子、今井浩孝
    • 学会等名
      第28回ビタミンE研究会
    • 発表場所
      東洋大学白山キャンパス (東京都 文京区)
    • 年月日
      2017-01-20
  • [学会発表] GPx4 Depletion Induced Novel Lipid Peroxidation Dependent Cell death and Disease.2016

    • 著者名/発表者名
      Imai H.
    • 学会等名
      The 6th International Selenium Conference (Se 2016)
    • 発表場所
      Jinan University (Guangzhou, China)
    • 年月日
      2016-10-21
    • 国際学会
  • [学会発表] 初代培養心筋細胞における協調的拍動形成にはPHGPxとビタミンEが重要である2016

    • 著者名/発表者名
      細金美緒、中曽根美咲、幸村知子、今井浩孝
    • 学会等名
      フォーラム2016衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 発表場所
      昭和大学薬学部旗の台キャンパス (東京都 品川区)
    • 年月日
      2016-09-10
  • [学会発表] 脂質酸化依存的新規細胞死フェロトーシスとGPx4欠損細胞死2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝
    • 学会等名
      第89回日本生化学会大会
    • 発表場所
      仙台国際センター ( 宮城県 仙台市)
    • 年月日
      2016-09-05
  • [学会発表] 網羅的shRNAライブラリースクリーニングによる脂質酸化依存的新規細胞死の実行因子の探索2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝、松岡正城、新井洋由
    • 学会等名
      第19回 Vitamin E Update Forum
    • 発表場所
      如水会館 (東京都 千代田区)
    • 年月日
      2016-08-01
    • 招待講演
  • [学会発表] GPx4により制御される脂質酸化依存的新規細胞死 ―フェロトーシスとの関連―2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝
    • 学会等名
      第4回ATAGO Respiratory Expert Seminar
    • 発表場所
      東京慈恵医科大学 中央棟8F (東京都 港区)
    • 年月日
      2016-06-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 脂質酸化依存的新規細胞死の抑制因子としてのSMS2の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝、大矢梨里香、熊谷剛
    • 学会等名
      第58回脂質生化学会
    • 発表場所
      秋田市にぎわい交流館AU (秋田県 秋田市)
    • 年月日
      2016-06-10
  • [学会発表] GPx4 Depletion Induced Novel Lipid Peroxidation Dependent Cell death and Disease2016

    • 著者名/発表者名
      Imai H.
    • 学会等名
      The 13th International Conference on the Chemistry of Selenium and Tellurium (ICCST-13)
    • 発表場所
      Gifu Nagaragawa Convention Center (岐阜県 岐阜市)
    • 年月日
      2016-05-26
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 黒酢成分による脂質酸化依存的心筋突然死の予防効果の解析2016

    • 著者名/発表者名
      今井浩孝、幸村知子
    • 学会等名
      第3回日本黒酢研究会
    • 発表場所
      東京ビックサイト (東京都 江東区)
    • 年月日
      2016-05-18
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi