公募研究
本研究計画では表皮肥厚性疾患の増悪に関わる新規生理活性脂質・アルケニル型リゾリン脂質・プラズマローゲン型リゾホスファチジルエタノールアミン(P-LPE)群の側鎖および極性基の構造上の違いを「リポクオリティ」と捉え、疾患における産生と受容を総合的に精査することで、新規リゾリン脂質の動作原理の解明をおこなうことを目的としている。具体的には、表皮肥厚性疾患、免疫炎症疾患、癌などの社会的疾患を対象として脂質メタボローム解析を展開することでアルケニル型リゾリン脂質代謝の全体像を分子レベルで解明とともに、予防・治療を目的とした取り組みをおこなう。以下に本年度の研究実績を示す。１、乾癬を惹起したマウス角質の脂質メタボローム解析をおこなうと、病態に応じてP-LPE産生量が増加した。また、P-LPEは複数の脂質化合物に代謝されること、P-LPE量に応じて表皮肥厚性疾患が緩和されることを示した。２、毛包に発現しているIIE型sPLA2が、不飽和脂肪酸およびリゾホスファチジルエアノールアミン（PE）を分子種非選択的に動員することで、毛皮質の発育障害の可能性があることを見出した。３、リンパ組織の樹状細胞に発現するIID型sPLA2（sPLA2-IID）は特にEPAやDHAなどのω３脂肪酸に由来する抗炎症性代謝物の産生とリンクしており、獲得免疫にブレーキをかける役目を担う。sPLA2-IID欠損マウスではリンパ組織のω３脂肪酸代謝物が減少するため、接触性皮膚炎（Th1応答）や乾癬（Th17応答）が増悪する一方で、抗感染免疫や抗腫瘍免疫が増強される結果、ウイルス感染や皮膚癌が改善することを見出した。４、破骨細胞の形成に、高度不飽和脂肪酸を含むPEの生合成の増加および細胞表面へのPEの露出を伴う細胞膜リン脂質の量的・質的変化が寄与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
１、アルケニル型リゾリン脂質代謝の総合理解多くのsPLA2はアルケニル型リゾリン脂質を産生すること、P-LPEがオートタキシンによってアルケニル型LPAに代謝される予備的知見を踏まえ、表皮肥厚性疾患や各種病態疾患を惹起させたsPLA2遺伝子欠損マウスや初代培養系を用いて、多様な分子種を有するアルケニル型リゾリン脂質の脂質メタボローム解析を網羅的におこなっている。現在は、高脂肪食負荷モデル、絶食モデル、廃用筋萎縮モデルを用いた網羅的脂質メタボローム解析を中心に展開しており、病態の進行と当該酵素および脂質分子の役割を総合的に体系化することを目指している。２、アルケニル型リゾリン脂質の作用点の同定in vivoおよびin vitroの実験からアルケニル型リゾリン脂質はＧ蛋白質共役型受容体を介して作用を発揮することが想定され受容体の絞り込みを進めている。現在約10種類ほどまで絞り込まれており、次年度中に作用点の同定までおこないたい。
１、アルケニル型リゾリン脂質代謝の総合理解。高脂肪食負荷モデル、絶食モデル、廃用筋萎縮モデルを用いた網羅的脂質メタボローム解析を中心に展開し、複数のsPLA2の関与が明らかになってきたので、病態の進行と当該酵素および脂質分子の役割を総合的に体系化する。２、アルケニル型リゾリン脂質の作用点の同定。in vivoおよびin vitroの実験からアルケニル型リゾリン脂質はＧ蛋白質共役型受容体を介して作用を発揮することが想定され、受容体の絞り込みを進めている。現在約10種類ほどまで絞り込まれており、次年度中に作用点の同定までおこないたい。３、バイオマーカーおよび創薬の標的となる可能性を見据え、ヒト炎症性皮膚疾患等の臨床検体を用いて対象となる酵素や受容体の発現局在解析および脂質メタボローム解析をおこない、アルケニル型リゾリン脂質の動作原理の全容を解明する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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