腸内環境を介したリポクオリティの形成と免疫応答・疾患

2016 年度 実績報告書

• 研究領域: 脂質クオリティが解き明かす生命現象
• 研究課題/領域番号: 16H01373
• 研究機関: 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
• 研究代表者: 國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, プロジェクトリーダー (80376615)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 脂質 / 免疫学 / アレルギー

研究実績の概要

本研究では、これまでに本研究グループが食物アレルギーモデルを用いて明らかにしてきた、亜麻仁油によるアレルギー性下痢抑制効果に関する研究を起点に、様々な臓器を介した抗アレルギー効果について検証実験を行っている。本年度は、亜麻仁油摂取時の腸管で高産生され、抗アレルギー活性を持つるEPAの代謝物の一つである17,18-EpETEに着目し、接触皮膚炎における効果を検証した。マウスモデルを用いた解析から、17,18-EpETEは接触皮膚炎により引き起こされる皮膚の腫れを抑制出来ることを見いだした。その際には好中球数の減少が認められるのに対し、樹状細胞のクラスターやIFN-γやIL-17を産生するT細胞の誘導には変化が見られなかった。さらに霊長類（カニクイザル）を用いた接触皮膚炎モデルを樹立し、本モデルを用いた解析から、マウスモデルと同様、17,18-EpETEはカニクイザルの接触皮膚炎においても、好中球の減少を伴う皮膚の腫れ抑制出来ることが分かった。これらの結果から17,18-EpETEはマウスの腸管アレルギーのみならず、マウスとカニクイザルの皮膚炎を抑制出来ることが判明した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、マウスを用いた機能性脂質の有効性評価と細胞レベルでのメカニズム解明を行うと共に、霊長類であるカニクイザルでの評価系を立ち上げ、有効性を確認することが出来たため。

今後の研究の推進方策

今後は標的細胞の候補として同定された好中球を中心に、受容体の同定、シグナルなど分子レベルでの解析を行うと共に、その知見を生体モデルに戻した解析を進めることで、抗アレルギー性脂質の分子・細胞・個体の各レベルでのメカニズム解明を完了する。

研究成果

• [雑誌論文] Sphingolipids and Epoxidized Lipid Metabolites in the Control of Gut Immunosurveillance and Allergy (2016)
  • 著者名/発表者名: Kunisawa Jun、Kiyono Hiroshi
  • 雑誌名: Frontiers in Nutrition 巻: 3 ページ: 3
  • DOI: 10.3389/fnut.2016.00003
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 腸内環境を起点に進める創薬研究 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 日本薬学会 第137年会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸が奏でる生体応答と健康科学への展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: JCHMシンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境データを活用した健康科学の推進 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 仁生プロジェクトセミナー
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内細菌と食を介した腸内環境の形成と健康・疾患 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第90回 日本細菌学会総会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境から考えるヘルスサイエンスの最前線 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 日本農芸化学会2017年度大会
  • 招待講演
• [学会発表] 栄養と腸内フローラが織りなす腸管免疫環境の構築と健康科学への展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 大阪大学臨床栄養研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 生活習慣と連動した腸内細菌叢の形成と健康科学への新展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: JSBi関西地域部会 第22回バイオメディカル研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境が導く生体応答の基礎的解明と健康科学への新展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第11回 関西ライフサイエンスリーディングサイエンティストセミナー
  • 招待講演
• [学会発表] セルフメディケーションにおけるサプリメント・健康食品の今後 ～科学的根拠の確立～ (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: セルフメディケーション学術フォーラム
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境を介した免疫システムの構築とワクチン、創薬、機能性食品開発への展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第19回 藤田保健衛生大学小児科後期研修セミナー
  • 招待講演
• [学会発表] 健康増進における腸内環境の重要性とPrecision medicine & nutritionとしての可能性 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 彩都産学官連携フォーラム2017
  • 招待講演
• [学会発表] Gut Environmental Factors Act as Natural Adjuvants in the Regulation of Intestinal Immune Responses against Oral Vaccines (2017)
  • 著者名/発表者名: Jun Kunisawa
  • 学会等名: 10th Meeting of the Japanese Vaccine Adjuvant Research Consortium
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 食と腸内フローラが奏でる腸内環境の構築と創薬・健康科学への新展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 創薬薬理フォーラム 第61回談話会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境を介した免疫制御と健康科学への新展開 (2017)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第20回日本病態栄養学会 年次学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 中鎖脂肪酸・ケトン食による代謝機能改善メカニズムの分子レベルでの解明 (2017)
  • 著者名/発表者名: 粕淵真由、渡辺啓太、宮本潤基、中島啓、國澤純、木村郁夫
  • 学会等名: 日本農芸化学会2017年度大会
• [学会発表] 17,18-EpETEは好中球の遊走を抑制することで接触性皮膚炎を軽減する (2017)
  • 著者名/発表者名: 長竹貴広、菊田順一、本田哲也、Prabha Tiwari、柳澤篤、石井優、椛島健治、國澤純
  • 学会等名: 第4回先進イメージング医学研究会・学術集会
• [学会発表] Organogenesis of inducible bronchus-associated lymphoid tissue has essential role in the induction of antigen-specific immune responses by Ag85B-hPIV2-based anti-tuberculosis vaccine in mice (2017)
  • 著者名/発表者名: Takahiro Nagatake, Hidehiko Suzuki, Ayaka Nasu, Soichiro Hirata, Yasuko Wada, Naomi Matsumoto, Michiko Shimojou, Sakiko Morimorto, Koji Hosomi, Kentaro Ogami, Yusuke Tsujimura, Mitsuo Kawano, Tetsuya Nosaka, Yasuhiro Yasutomi and Jun Kunisawa
  • 学会等名: The 10th Meeting of the Japanese Vaccine Adjuvant Research Consortium
  • 国際学会
• [学会発表] Claudin-4指向型経鼻ワクチンにおける鼻腔物理的バリアの影響 (2017)
  • 著者名/発表者名: 鈴木英彦、長竹貴広、那須彩香、池上浩司、瀬藤光利、濱崎洋子、清野宏、八木清仁、近藤昌夫、國澤純
  • 学会等名: 第10回次世代アジュバント研究会
• [学会発表] 腸内環境データを活用した健康科学と健康長寿社会の実現に向けた展開 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第1回マイクロバイオームワークショップ
  • 招待講演
• [学会発表] アレルギーの予防と改善を目指した腸内環境の理解と応用 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第3回総合アレルギー講習会
  • 招待講演
• [学会発表] Gut Environment in the Regulation of Host Immunity and Its Application to the Human Health Science (2016)
  • 著者名/発表者名: Jun Kunisawa
  • 学会等名: 6th Investigative Commission of Ortho-Organogenesis
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Critical Roles of Gut Environmental Factors in the Regulation of Immunosurveillance and Allergic Diseases (2016)
  • 著者名/発表者名: Jun Kunisawa
  • 学会等名: The 45th Annual Meeting of The Japanese Society for Immunology
  • 招待講演
• [学会発表] Nutrition and Microbiome in Human Health and Diseases (2016)
  • 著者名/発表者名: Jun Kunisawa
  • 学会等名: The 2nd Osaka University Twin Research International Symposium
  • 招待講演
• [学会発表] 食事や生活習慣と連動した腸内フローラの形成と生体応答 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 神戸大学農工連携次世代バイオプロダクション(iBioK)主催フォーラム
  • 招待講演
• [学会発表] 消化管免疫と腸内環境から考えるPrecision Medicine & Nutritionの可能性 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第54回小腸研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境を介した免疫制御の基礎的解明と応用・実用化研究に向けた展開 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第12回日本食品免疫学会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸から考えるヘルスサイエンス (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第3回 六甲医学研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内細菌を活用したワクチン開発、免疫創薬、ヘルスサイエンスへの展開 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: マイクロバイオームワークショップ～健康と疾患に関わるヒト細菌叢解析の最適手段～
  • 招待講演
• [学会発表] 健康指標としての腸内細菌 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: JASIS2016 ライフサイエンス イノベーションフォーラム
  • 招待講演
• [学会発表] Precision medicine & nutritionの実現に向けた腸内環境の理解と応用 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 腸内菌叢の創薬応用セミナー
  • 招待講演
• [学会発表] 腸から考えるヘルスサイエンスと創薬・ワクチン・機能性食品開発への展開 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第21回 那須ティーチイン
  • 招待講演
• [学会発表] 腸内環境から考えるヘルスサイエンスと将来展望 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 第33回 大阪大学ツインリサーチセミナー
  • 招待講演
• [学会発表] 栄養―腸内フローラネットワークを介した免疫制御と疾患 (2016)
  • 著者名/発表者名: 國澤純
  • 学会等名: 腸内マイクロビオータ研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 細菌叢－ムチン－短鎖脂肪酸の統合解析による炎症性腸疾患病理機構の解明 (2016)
  • 著者名/発表者名: 山田恭央、源田知美、日野真吾、飯島英樹、國澤純、森田達也、長谷耕二
  • 学会等名: 第39回日本分子生物学会年会
• [学会発表] Intestinal M cells contribute to maintenance of gut immune homeostasis (2016)
  • 著者名/発表者名: Yutaka Nakamura, Yarimizu Chiaki, Tsuneyasu Kaisho, Jun Kunisawa, Hiroshi Kiyono, Koji Hase
  • 学会等名: The 45th Annual Meeting of The Japanese Society for Immunology
• [学会発表] Mucus accumulation caused by impaired mucociliary function is an interfering factor in the C-CPE-based claudin-4-targeting nasal vaccine (2016)
  • 著者名/発表者名: Hidehiko Suzuki, Takahiro Nagatake, Ayaka Nasu, Mitsutoshi Setou, Hiroshi Kiyono, Kiyohito Yagi, Masuo Kondoh and Jun Kunisawa
  • 学会等名: The 45th Annual Meeting of The Japanese Society for Immunology
• [学会発表] 17,18-epoxy-eicosatetraenoic acid ameliorated contact hypersensitivity by inhibiting neutrophil infiltration into the skin (2016)
  • 著者名/発表者名: Takahiro Nagatake, Tetsuya Honda, Hidehiko Suzuki, Makoto Arita, Hiroshi Kiyono, Kenji Kabashima, Jun Kunisawa
  • 学会等名: The 45th Annual Meeting of The Japanese Society for Immunology
• [学会発表] Characterization and modulation of cell wall components of Lactobacillus antri for the enhanced production of intestinal IgA antibody (2016)
  • 著者名/発表者名: Shino Yamasaki-Yashiki, Taku Toramoto, Jun Kunisawa, Yoshio Katakura
  • 学会等名: 5th AFSAB International Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] ロイコトリエンB4受容体BLT1はB細胞増殖を促進することで経口ワクチンに対する抗原特異的IgA抗体産生を促進する (2016)
  • 著者名/発表者名: 長竹貴広、平田宗一郎、古賀友紹、佐々木文之、鈴木英彦、細見晃司、横溝岳彦、國澤純
  • 学会等名: 第20回日本ワクチン学会学術集会
• [学会発表] 腸管IgA産生を増強するLactobacillus antriの細胞壁成分の解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 寅本 拓、山崎 思乃、國澤 純、片倉 啓雄
  • 学会等名: 第68回日本生物工学会大会
• [学会発表] Contact hypersensitivity is ameliorated by 17,18-epoxy-eicosatetraenoic acid, a metabolite from eicosapentaenoic acid, in the skin of mice and non-human primates (2016)
  • 著者名/発表者名: Takahiro Nagatake, Yumiko Shiogama, Tetsuya Honda, Yosuke Isobe, Makoto Arita, Naomi Matsumoto, Michiko Shimojou, Prabha Tiwari, Hidehiko Suzuki, Yasuhiro Yasutomi, Hiroshi Kiyono, Kenji Kabashima, Jun Kunisawa
  • 学会等名: International Congress of Immunology 2016
  • 国際学会
• [学会発表] Immunological involvement of airway mucociliary function in the claudin-4-targeting pneumococcal nasal vaccine (2016)
  • 著者名/発表者名: Hidehiko Suzuki, Takahiro Nagatake, Ayaka Nasu, Koji Ikegami, Mitsutoshi Setou, Hiroshi Kiyono, Kiyohito Yagi, Masuo Kondoh and Jun Kunisawa
  • 学会等名: International Congress of Immunology 2016
  • 国際学会
• [学会発表] Inducible bronchus-associated lymphoid tissue plays an important role in the induction of antigen-specific immune response by Ag85B-hPIV2-based anti-tuberculosis vaccine in mice (2016)
  • 著者名/発表者名: Takahiro Nagatake, Yasuko Wada, Naomi Matsumoto, Michiko Shimojou, Soichiro Hirata, Ayaka Nasu, Hidehiko Suzuki, Koji Hosomi, Kentaro Ogami, Yusuke Tsujimura, Mitsuo Kawano, Tetsuya Nosaka, Yasuhiro Yasutomi and Jun Kunisawa
  • 学会等名: Immunology 2016
  • 国際学会
• [図書] 次世代アジュバント開発のためのメカニズム解明と安全性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 細見晃司、國澤純
  • 総ページ数: 26-33
  • 出版者: シーエムシー出版
• [図書] Encyclopedia of Immunology (2016)
  • 著者名/発表者名: Kunisawa Jun
  • 総ページ数: 120-126
  • 出版者: Academic Press
• [備考] 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト
  • URL: http://www.nibiohn.go.jp/vaccine_material_project/index.html