公募研究
タンパク質膜挿入反応に必須の「糖脂質酵素」MPIaseの発現量が、培養温度の低下に伴い5~10倍にまで上昇することが判明したため、その分子機構を明らかにすることを目的として研究を進めた。その結果、以下のような研究成果が得らえた。1.MPIase生合成の律速段階を触媒する酵素CdsA、YnbBのmRNA転写量が温度の低下に伴い5倍以上上昇することが判明した。2.CdsAのmRNA量を低温シフト後に経時的にモニターしたところ、低温シフト5分後に一過的に10倍程度に増加した後、15分後以降には約5倍程度のレベルで安定することを見出した。3.cdsA遺伝子のプロモーター解析の結果、低温下での発現誘導を受けるもの(Pcold)と受けないもの(PispU)があることを見出した。4.PcoldとPispUの間にCspAの認識部位が存在することから、低温シフト後の一過的なCdsAのmRNA量の上昇とそれに続く安定的な上昇を説明できるモデルを考案した。すなわち、低温を感知しPcoldが作動し、そこから転写されるmRNAはCspAにより安定化される。その後CspAレベルが低下するためmRNAレベルは低下するものの、Pcoldは作動し続けるため安定的に高いレベルが保たれるというものである。5.cdsA遺伝子の低温下での発現誘導には、翻訳レベルでの制御も関わっていることを強く示唆する結果を得た。cdsA遺伝子の開始コドン上流にはステムループ構造を形成する配列を同定した。cdsA遺伝子を構成的に発現するプロモーターに連結したとき、このステム・ループ構造を形成できないサブクローンでは、低温下での発現誘導ができなくなっていた。6.MPIaseの低温下での発現量増加は、低温で膜挿入反応が阻害されたことによるストレス応答ではなく、生体膜が低温を感知して引き起こされる特異的な応答であることが明らかになった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~sec/