研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
16H01376
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野 崇人 東北大学, 工学研究科, 教授 (90282095)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱量センサ / 熱力学 / 細胞 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
研究代表者等はこれまでに、液中の試料が発する微量の熱を測定する真空絶縁・熱伝導型熱量センサを開発してきた。本研究ではこの熱量センサを実際の細胞計測に応用し、細胞科学の研究に利用できるようにシステム化を図る。細胞の代謝などとの同時計測を可能にするためのシステムを開発する。 本研究では、高感度の熱量センサを褐色脂肪細胞やがん細胞などの1細胞のリアルタイム計測に適用して、生物科学の研究に利用できるようにシステム化することを目的とする。このためにオンチップ型の高感度熱量センサを開発する。細胞をマイクロチャンネル内に流し、その中の細胞1つを補足して熱量を計測する。細胞に刺激を与えたときの熱産生などの変化を高感度に計測できるシステムとする。 一方、これまでに、蛍光温度センサで測定した細胞の計測温度と理論的発熱量との大きなミスマッチが知られている。蛍光計測による細胞内の温度と、本熱量センサを利用した細胞外への熱の流れを同時測定し、従来に問題となっていた細胞の熱力学モデルを解くための、知見を得ることも目的とする。 本年度は細胞の熱量計測を可能にするオンチップ型熱量センサを開発した。熱量センサとしてはVO2を利用したセンサや振動型の熱量センサを用いた。センサは細胞を流す流路内に集積化し、1細胞をトラップできる構造とした。振動型のセンサを試作し、その動作を確認した。また、VO2センサを実現する上で重要な薄膜技術および作製プロセスを確立した。計測チップのプロトタイプを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶液中の試料から熱をセンサに伝導させ、高感度熱量センサで細胞の熱量を測定するシステムを開発した。センサは、そのサイズを小型化し高感度化を達成すると同時に、センサから外部への熱の流れを極力低減することで高感度化を達成する構造とした。 熱応力により、大きく共振周波数が変化する構造や材料を開発した。予備的な研究で、VOxなどの材料を用いた振動子では、共振周波数の温度変化が大きくなることが観測されていたが、VOxの組成や不純物の導入によりその性能が大きく変化する。このため、組成や不純物の温度依存性を調べた。 熱量センサだけではなく、蛍光ラベルにより代謝関連物質(酸素)を計測できる実験系を考案した。測定する細胞をマイクロチャンネル中で捕捉して計測する必要があるが、その補足確率が悪いという問題があった。細胞を熱ガイドに確実に固定するために、電気泳動を用いた捕捉を可能とするシステム構成とした。 実際の細胞に適用して、計測システムの問題点を明らかにするため、褐色脂肪細胞を用いた簡易実験を行いその実効性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
この熱量センサを実際の細胞計測に応用し、細胞科学の研究に利用できるようにシステム化を完成する。細胞の代謝などとの同時計測を可能にするためのシステムを実証する。 蛍光温度センサで測定した細胞の計測温度と理論的発熱量との大きなミスマッチの問題に取り組む。蛍光計測による細胞内の温度と、本熱量センサを利用した細胞外への熱の流れを測定し、従来に問題となっていた細胞の熱力学モデルを立てる。
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