公募研究
ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、細胞内の唯一のミトコンドリア分解機構である。白色脂肪組織中の褐色脂肪“様”細胞(以下、ベージュ細胞)には、ミトコンドリアと熱産生に関わるミトコンドリア脱共役タンパク質が非常に多く存在し、重要な熱産生器官として働く。ベージュ細胞は、低温刺激により白色脂肪細胞から分化転換することで発生し、温暖環境へ順応する過程で白色脂肪細胞へ退行する。こうした白色脂肪組織で起こるベージュ細胞の増減は、重要な環境温度への順応機構であるが、この過程で必ずダイナミックなミトコンドリア量の増減を伴っている。ミトコンドリア量の増減は、ミトコンドリア生合成と分解のバランスで成り立つが、本研究では、ミトコンドリア分解、即ちマイトファジーを研究し、このミトコンドリア量の変化のメカニズムと意義の解明を試みる。具体的には、脂肪組織における温度環境変化に応答したマイトファジーレベルの経時的な観察、環境温度変化に応答したマイトファジー誘導の生理的意義の解明、前駆脂肪細胞培養を用いた脂肪細胞におけるマイトファジーの分子機構の解明などを行う。平成28年度の研究では、マイトファジー観察用に蛍光タンパク質を発現させたマウスを用いて、飼育環境を温暖環境→低温環境→温暖環境と変化させた時、脂肪組織を観察し、低温環境では白色脂肪細胞内のミトコンドリアが急激に増加しベージュ細胞様になること、低温環境から温暖環境に戻すとマイトファジーが誘導され、徐々にミトコンドリア量が減少し白色脂肪細胞に戻っていくことを観察することが出来た。また、マイトファジー因子であるParkinのノックアウトマウスとマイトファジー観察用マウスを交配した。現在、Parkinが欠損したマウスでの白色脂肪細胞の温度環境変化に対する応答を観察する準備を整えている。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、マイトファジー観察用マウスを用いて、白色脂肪組織、褐色脂肪組織の切片を作製し、ミトコンドリアの染色による形態や量の観察、また発現している蛍光を観察することでマイトファジーを観察する手技が確立した。これらの手技を用いて、実際に温度環境の変化に応じてマイトファジーが誘導されることを確認することが出来た。さらに、Parkinノックアウトマウスで脂肪細胞におけるマイトファジーを観察する準備が整い、これから観察を進めるところである。これらの実験は、ほぼ当初の計画通りに進んでおり、全体としておおむね順調に推移していると考えられる。
平成29年度は、Parkinノックアウトマウスにおいて、温度環境変化時の脂肪細胞でのマイトファジーを観察し、脂肪細胞でのマイトファジーにParkinがどの程度貢献しているかを明らかにする。また、前駆脂肪細胞培養系を用いてベージュ様細胞に分化転換させた細胞が白色脂肪化する時に誘導されるマイトファジーを観察し、そのマイトファジー誘導に関わる分子機構の解明を進める。
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http://www.med.niigata-u.ac.jp/mit/