研究領域 | 温度を基軸とした生命現象の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
16H01385
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
塩見 邦博 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (70324241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カイコ (Bombyx mori) / 休眠 / 温度感受性 TRP チャネル / 休眠ホルモン / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
カイコの休眠誘導における環境温度の応答システムの解明を目指して、TRP チャネルによる環境温度の受容から約1ヶ月間にわたる温度情報の記憶・保存と統合に関わる分子ネットワークについて、分子から細胞・神経回路レベル、さらには個体レベルまでを解析する。そのため、次の3つのサブテーマ [A]~[C] を実行した。[A] 環境情報の受容に関わる分子ネットワークの解析、[B] 環境情報の記憶・保存と統合処理に関わる分子ネットワークの解析、[C] 休眠ホルモン (DH) の放出制御に関わる分子・神経ネットワークの解析。 その結果、[A] ではゲノム編集技術によって温度センサー (BmTRPA1) のノックアウト (KO) 系統を作出し、この系統では休眠卵誘導条件においても非休眠卵が産下されることを確認した。さらに、光センシングや光周性に関わると考えられる遺伝子の KO 系統を作出した。[B] では、線虫 (C. elegans) の温度応答・耐性幼虫誘導に関わる遺伝子セットの相同体群とインシュリン様ペプチド群に注目して、それらの遺伝子群の機能解析をゲノム編集技術や AcNPV 遺伝子導入法によるレポーター遺伝子解析などを用いて行なった。[C] では、DH の放出制御に関わると考えられる脳内遺伝子の候補を明らかにした。そして、DH の放出は脳内のある種の神経伝達に関わる遺伝子の発現量に依存して調節され、このことが休眠性の決定に重要である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究の目的に沿い、[A] 環境情報の受容に関わる分子ネットワークの解析、[B] 環境情報の記憶・保存と統合処理に関わる分子ネットワークの解析、[C] 休眠ホルモン (DH) の放出制御に関わる分子・神経ネットワークの解析に関して、研究実施計画の通りに進行している。ただし、温度センサーの活性化シグナルの下流因子を同定することと、光センサーの同定と温度と光センシングの協調作用の解析には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
休眠誘導に関連すると考えられる遺伝子の KO 系統をゲノム編集技術を用いて作出し、表現型の解析を引き続き行なう。温度センサーの活性化シグナルの下流因子と光センサーの同定を目指す。
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