研究実績の概要 |
温度感受性が大きい蛍光タンパク質と小さい蛍光タンパク質を組み合わせることにより、レシオメトリックな蛍光性温度プローブ、gTEMPを開発した(Nakano et al., PLoS ONE, 2017)。gTEMPは2つの蛍光タンパク質の蛍光強度の比で温度をイメージングするため、細胞の形やプローブの発現量に依存しない定量的な温度のイメージングが可能である。また、5℃から50℃までレシオ値が変化することを確かめており、培養細胞だけでなく植物やメダカなど変温動物にも適用可能である。gTEMPを用いてミトコンドリア内膜のプロトン濃度勾配の脱共役剤を添加した時のミトコンドリア内の温度上昇や、これまで他の細胞内温度プローブを用いて報告されていた細胞内温度が不均一であるデータを得ることができた。さらに、生きた個体内での温度計測に挑戦し、メダカの初期胚においてもgTEMPの発現を確認し、温度分布のイメージングに成功した。 しかし、gTEMPにも問題点がある。紫外領域の波長で励起する必要があるため、生体試料への光毒性や試料の自家蛍光の影響が無視できない場合がある。これらの問題を解決するために、より長波長の励起光で励起できる温度プローブタンパク質の開発も進めている。具体的には緑、黄、橙、赤色の蛍光タンパク質の蛍光強度や蛍光スペクトルの温度依存性を調べて、温度による変化が大きい蛍光タンパク質と小さい蛍光タンパク質を探索した。
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