公募研究
NLRP3の遺伝子変異を持つ患者(クリオピリン関連周期熱症候群:CAPS)では、過剰なインフラマソームの活性化によるIL-1β産生を介して発熱・炎症が引き起こされ、寒冷刺激によって炎症が惹起される家族性寒冷自己炎症症候群(FACS)と、寒冷刺激によらない慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(CINCA)がある。そこで、FCASのL353P変異とCINCAのD303N変異の低温条件(32℃)における炎症惹起機構について検討した。ヒト単球細胞株にレンチウイルスベクターを用いてテトラサイクリン(Dox)誘導性にL353P・D303Nを発現する系を作製した。NLRP3-L353Pでは低温条件において著明にIL-1β産生が増強され、インフラマソーム活性化指標であるASCの不溶性複合体形成も促進されたが、NLRP3-D303Nでは低温条件によるインフラマソーム活性化の増強効果は減弱していた。一方、既知のインフラマソーム活性化因子によるIL-1β産生は低温条件において有意に抑制された。さらに低温である27℃条件では、NLRP3-L353Pにより誘導されるIL-1β産生も抑制された。また、TRPチャネル(A1・V4)阻害剤はNLRP3-L353Pによって誘導されるIL-1β産生に影響を与えなかった。これらの結果から、FCAS変異によりマクロファージにおいて低温感受性が獲得され、TRPチャネル以外の経路が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マクロファージにおけるNLRP3-L353PおよびNLRP3-D303Nの誘導発現系を構築し、低温条件によるインフラマソーム活性化およびIL-1β産生への反応を検証することができた。また、既知の危険シグナルによるインフラマソーム活性化に対する低温条件およびNLRP3変異の影響についても結果を得ることができた。
平成29年度は、これまでに構築したNLRP3変異誘導発現系を用いて、インフラマソーム活性化における低温感受性のより詳細な分子機序を解析するとともに、低温条件による細胞死(Pyroptosis)への影響を検討する。また、危険シグナルによるインフラマソーム活性化が低温条件下で抑制される機序についても、TRPチャネルなどの温度センサーの関与や低温による細胞代謝への影響等の面から検討を行う。さらに、肝虚血細流傷害が、温度変化によって影響を受けることを観察していることから、このマウス病態モデルに低温条件を負荷し、この病態のインフラマソーム依存性が温度変化によって影響を受けるかについて、インフラマソーム構成分子の欠損マウスを用いて評価する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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