研究実績の概要 |
生体(哺乳類等)の体温調節にとって、外部環境と接する身体表面皮膚における温度センシングは極めて重要である。この皮膚温度センシングは、皮膚に分布する求心性神経を柱として、直接間接に行われ、脳に温度情報を伝達する。ところが、温度センサー分子の発見や電気特性解析、KOマウスの行動解析の研究が進んだ現在においても、皮膚求心性神経が、皮膚組織の内部において実際にどのように温度を感知するのか、その温度センシングの細胞レベルの実像は依然として明らかではない。これは生体の体温調節機構を理解するのに必須な、温度生物学の重要な課題である。そこで本研究は、温度刺激(熱と冷却)を定量的に負荷し、それに対する皮膚求心性神経の温度センシング機構を生動物2光子イメージングや生体システム同定で解明することを目的とする。平成29年度には、次の項目AとBを行った。A.閉ループ型の高精度な温度刺激負荷制御システムの開発:制御工学による閉ループ型装置開発技術を活用し、半導体による局所皮膚温度計測-制御部PC-発熱冷却モジュール(ペルチェ素子)の閉ループ制御下に、局所皮膚温を調節する技術を開発し、改良した。局所皮膚組織に、システム同定用の工学信号(白色雑音様や階段状, 0~50℃)の温度刺激など、自在に温度刺激を、前年度よりも精確に負荷できるようになった。B.皮膚求心性神経の生動物2光子イメージング:局所皮膚組織の生動物2光子イメージング実験技術を改良し、ならびに開発した全身の求心性神経特異的にCa蛍光プローブを発現させたラット(Nav-Cre::GCaMP6fflox)を利用し、局所皮膚組織に分布する皮膚求心性神経の終末活動の、温度変化への応答をリアルタイムに細胞レベルで可視化する実験を重ねると共に、温度帯域による神経応答の特性を解析した。
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