近年、遠距離のゲノム領域間相互作用が遺伝子発現制御に関与していることが明らかとなってきた。ゲノム領域間相互作用は特定遺伝子領域の核内における「物理的可動範囲」を規定していると考えられる。一方で、外来レポーター遺伝子を利用した研究から、局所的クロマチン構造の脱凝縮を伴う転写活性化と当該遺伝子領域の流動性に相関があることが示されており、上記の考察とは相反している。そのため、高度な遺伝子発現制御機構の理解には、各遺伝子の転写と核内動態、そしてゲノム領域間相互作用の関係理解が求められている。本研究では、マウスES細胞をモデルとし、特定遺伝子の核内位置および転写活性の可視化技術(ROLEXシステム)を利用し、多数の内在遺伝子の転写と核内動態の関係性を調べ、さらに各遺伝子のゲノム領域間相互作用をHi-Cデータから解析することで、高次ゲノム構造の動態と転写活性の関係性を明らかにすることを目指す。本年度は、トランスポゾンを利用して1コピーのみゲノム中にランダムにレポーターカセットが挿入された50細胞株を樹立した。今後これらを利用して、ライブイメージングを実施する。
|