研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
16H01410
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
真柳 浩太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50418571)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 可視化 / ナノバイオ / 超分子複合体 / 生物物理 / クロマチン / ヌクレオソーム / リモデリング |
研究実績の概要 |
本年度はMCM複製ヘリケース、複製開始に関与するSld3-Sld7複合体、クロマチンリモデリング因子FACTとヌクレオソームから生じる複合体の構造解析に着手した。このうちFACT-ヌクレオソームの系では、FACTのSPT16 サブユニットのMid ドメインとヌクレオソームを混合して形成する複合体の精製に成功し、単粒子解析による立体構造解析に進展した。連携研究者の津中博士による先行研究等により、Mid ドメインはAID領域を介して1組のH2A/H2Bダイマーと相互作用を行い、これをヌクレオソームから引き抜き、更に潜り込んでH3/H4と結合することでヌクレオソームを不安定化すると考えられている。所属研究所の凍結ロボット及びクライオ電子顕微鏡を用いることで、凍結条件を最適化し、立体構造解析を開始した。その結果、生成物であるヘキサソームの構造を15.6オングストロームの分解能で得ることができた。ヘキサソームは転写において非常に重要な構造の一つであるものの、その構造は未だに解析されていない。更に高分解能の解析を行うために本試料を用いて、大阪大学高圧電顕施設のクライオ電顕によって観察及び画像を記録した。本装置に搭載されている電子直接検出カメラによる動画撮影を行い、露光中の試料の動きを補正することで、より高分解能の解析が可能となる。本プロジェクトのターゲットは分子量が20万前後と比較的小さく、従来は高分解能の解析が困難とされていた。本装置にはそのような小さな複合体の解析に効果的な位相板が組み込まれており、これを使用することで、分解能の向上を試みた。その結果これまでに,ヌクレオソームの系では8.8 オングストロームまで分解能が向上した。その他、Sld3-Sld7及びMCMについては、負染色試料によって二次元平均像が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロマチンリモデリング因子FACTの系については、急速凍結により複合体を氷中に包埋する際、複合体が予想以上に不安定になり、解離すること判明した。電顕像の画質としては氷の厚さは極力薄い方が理想的であるものの、氷を薄くすることで、複合体の不安定化が促進される傾向があったため、適度な厚さを保ちつつ、位相板の使用により解析に必要なコントラストを得ることを目指した。その結果分解能は限られていいるものの、これまで未知であったヘキサソームの構造を捉えることができ、この構造が溶液中で安定に存在しうることを、直接可視化することで示すことができた。電子直接検出カメラによる解析も進行しつつあり、当初の計画どおり概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
位相差板の活用等により、従来では解析が困難であった比較的小さなFACT-ヌクレオソームの系についても、9オングストロームを切る解析に成功した。しかしながら未だ条件が最適とはいえず、より高分解能の解析が可能であると考えている。今後は試料作成条件、撮影条件をより最適化することで、原子分解能の解析を行い、ヌクレオソームの構造変換の機構に迫る。
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