28年度までに、クロマチンの「弛緩の程度」をゲノム全体に渡ってプロファイルできるATAC-seq法を用いて、ゴノサイトでのクロマチン構造変化を明らかにした。その結果、産まれる数日前(E17.5)というタイミングで一過的にオープンなクロマチン構造を取る染色体領域を発見し、それらをDAD(Differentially Accessible Domain)と名付けた。DADはマウスゲノムに広く存在し、数Mbから十数Mbと広い領域に渡って形成される。また、DADは遺伝子砂漠に形成されていた。次に、DADの時系列的な振る舞いを明らかにするためにプロファイルするタイムポイントを増やした。その結果、E17.5で一旦形成されたDADはその後消失し、DADはゴノサイトで一過的に形成されることが明らかになった。 29年度の解析から以下のことを明らかにした。DADに形成されるピークのおよそ80%はゲノム上の反復配列であるトランスポゾン上に存在する。ゴノサイトを用いたChIP-seqの解析からH3K27me3やH3K9me3といった抑制性のヒストンマークはE13.5ではDAD内のATAC-seqピーク上に濃縮しており、それらはE17.5にかけて減少する。一方、活性性のヒストンマークであるH3K4me3はそれらと相補的な局在を示す。これらのことから、ゴノサイトにおいてトランスポゾンの多くはヒストンによってその発現が制御されていることを明らかにした。上記の解析に加えて、DADとde novo DNA methylationとの関係性に着目した。ゴノサイトでのde novo DNA methylationは2回起きるが、DADは二度目のmethylationによってメチル化を受けることがわかった。つまり、ヘテロクロマチン化されているDADはまずオープンなクロマチン状態になった後に、DNAメチル化される。
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