公募研究
本研究では、機能的全脳イメージングに適用可能な高精度な画像処理手法の開発を目的として研究を進めている。H28年度は、曲率に基づいた領域の再分割法と、多変量混合ガウス分布による画像の近似手法を組み合わせた細胞検出アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムを用いて、線虫の全脳イメージング画像(xyzの3次元)中の密集した細胞核を高精度に検出できることを確認した。さらに、線虫の機能的全脳イメージング画像(xyz+tの4次元)を用いて、多変量混合ガウス分布による画像の近似手法が細胞の追跡や輝度の定量にも適用可能であることを見出した。これらの手法を適用することで、機能的全脳イメージングの4次元画像から個々の神経活動を自動的に抽出することが可能になった。また3D蛍光画像中の核の自動検出の結果を可視化するためにMatlab/ImageJ ベースのGUIを開発した。これらの成果をまとめた論文はPLOS Computational Biology誌に掲載された。また細胞の追跡のために、画像特徴量と非剛体変形を組み合わせたレジストレーション手法について検討した。2D画像に対してSIFT特徴量やSURF特徴量を計算し、異なるフレーム間で対応点を求めたところ、細胞の配置が特徴的ないくつかの領域については正しい対応関係を得ることができた。しかし3D画像への拡張が大掛かりになることや、特徴点が疎になり細かな変形に対応できないこと、外れ点(outlier)が多く得られてしまい除去が大変なことなど、いくつかの問題点も判明した。一方で、行動中の線虫の機能的全脳イメージングを目指して、高速蛍光イメージングが可能な新規光学系の構築を進めた。試作機による評価を進め、線虫の全脳イメージングの3D画像を得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
画像処理手法の開発について、当初計画のとおり研究が進み、研究成果をまとめた論文を公表することができたため。
開発した画像処理手法は細胞の追跡性能が十分でないため、アルゴリズムの改良を進める。また他の追跡手法を開発して、追跡精度の向上を図る。とくに本領域公募班の玉田班が開発した3Dオプティカルフロー法が神経細胞の追跡にも適用できるか検討する。さらにこれらの手法をGUIに搭載して、自動追跡の結果等を可視化したり、手動での補正を容易にする。また複数の追跡手法を組み合わせることで追跡精度を向上させることができるか検討する。あわせて、高速蛍光イメージング光学系の構築をすすめ、取得されたデータに対して適用可能な画像処理手法の開発を試みる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件)
実験医学増刊号
巻: 35 ページ: 875-8
生物物理
巻: 57 ページ: 020~022
10.2142/biophys.57.020
arxiv.org
巻: - ページ: -
PLOS Computational Biology
巻: 12 ページ: e1004970
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