公募研究
近年、光により細胞内シグナル伝達系に摂動を与えるツールが開発され、細胞内シグナル伝達系を時間的に空間的に操作することができる強力な手法となりつつある。しかしながら、これまで報告されているもののほとんどは青色光を用いたものであり、GFPや多くのFRETイメージングと競合してしまうという欠点があった。そこで本研究では「イメージングに用いることができる赤色光遺伝学システムの開発」を目的とした。Phytochrome B-PIF系に着目した。この系は、630 nmの赤色光でPhyBとPIFが二量体を形成し、750 nmの近赤外光で解離する系である。しかしながら、補因子として光合成関連色素であるPCBを必要としており、外部から添加する必要があった。そこで、哺乳類培養細胞内でPCBを合成させる系を開発することをこころみた。スクリーニングの結果、光合成細菌のPCB合成にかかわる遺伝子4つを哺乳類培養細胞に導入することでPCBが合成されることが分かった。さらにこの4遺伝子をP2Aペプチド遺伝子でタンデムにつなげたポリシストロニックベクターを開発し、PCB合成を1つのプラスミドで誘導することができるシステムを開発した。さらに、この系を用いたPhyBとPIFの光による二量体を蛍光イメージングにより示した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、哺乳類培養細胞においてPCBの産生を誘導することができた。またポリシストロニックベクターによりPCBの産生が簡便に行えるようになったことが技術的には大きな進展であった。またPCBの外部添加無しでPhyB-PIF系を培養細胞で機能させることができたことからproof-of-conceptまで達することができたと言える。
PCBの合成を増やすべく、PCBの分解にかかわる因子のノックダウンやノックアウトを試みる。また今回のシステムを応用するために、細胞内シグナル伝達系を実際に操作することに試みる。具体的にはERK経路やAkt経路を赤色光/近赤外光で制御することを試みる。最終的には青色光と組み合わせて多重操作ができることを示したい。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
PLoS One
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