我々は組織透明化により開発したDDSキャリアの組織中空間分布を評価することを想起し、リポソームなどのDDS製剤の評価法として適する組織透明化法として、脂質膜を保持しつつ、充分な透明化効率を発揮する新規組織透明化試薬Seebestを開発している。Seebestは脂溶性カルボシアニン色素DiIによる血管染色に対応し、脂質構造が電顕レベルで保持でき、リポソームの組織中空間分布も解析可能であるため、DDS評価に適することが示されている。さらに、pHも調整可能であり、ドキソルビシンの組織中空間分布評価を行い、pHを調整することで透明化中のドキソルビシンの組織からの漏出を抑えつつ、蛍光強度を高めることで、心臓、肝臓、腎臓において、細胞核に集積したドキソルビシンの可視化に成功した。 Seebestは組織透明化スピードも高く、有益な方法であるが、低波長域に光吸収、自家蛍光があることが問題であった。そこで、Seebestに用いるポリエチレンイミンの構造を改変することで、低波長域の光吸収および自家蛍光を低減し、DAPIによる核染色パフォーマンスを増大することができた。 Seebestでは、膜を保持するため、そのままでは抗体染色に対応できない。しかし、Seebestに浸漬した組織を洗浄し、薄切して抗体染色を行ったところ、チューブリンを観察できたことから、抗原性は保持していることが確認された。そこで、一度蛍光を観察した後、一部の色を抜き、透過処理を施して抗体染色した後、もう一度同じ箇所を観察する方法として、三次元光顕・光顕相関法(C2LM)を考案した。脂溶性カルボシアニン色素の洗浄と酸化ストレスマーカーCellROX deep redのフォトブリーチにより、一度観察した色を抜くことには成功したが、抗体の染色がうまくいかなかった。今後、さらに三次元抗体染色について検討を行う予定である。
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