研究領域 | 共鳴誘導で革新するバイオイメージング |
研究課題/領域番号 |
16H01439
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
市村 垂生 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 上級研究員 (50600748)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 生物物理 |
研究実績の概要 |
本研究では、生細胞や組織内の分子のポラリティを非染色で可視化する手法として、偶数次非線形コヒーレント光散乱の干渉イメージング技術の確立を目的とする。干渉によって光の位相を検出するため、分子の持つ分極率の符号や虚部を知ることができる。とくに本研究提案では、実数分極率の符号から、分子のポラリティを計測する。これを実現するために、世界で初めて、ビーム走査型の非線形散乱干渉イメージング法の確立に取り組む。過去に報告された干渉イメージングではステージ走査だったため、応用範囲は限定されていたが、ビームを走査することにより、生細胞内の高速イメージングが可能になる。研究期間内に、タンパク質フィラメント(微小管、アクチン、各種中間径フィラメント)の、細胞内におけるポラリティおよびその分布計測を行い、本手法の有効性を示したい。本手法で得られる分子情報は、他の光学顕微鏡法では得られない情報であり、生命科学に大きな波及効果が期待できる。 初年度の平成28年度は、当初の計画通り、二次高調波の干渉イメージング装置の基礎光学系の構築に取り組んだ。細胞イメージングのために、ビーム走査と非同軸干渉計の配置を採用した。励起光を2光路に分岐し、一方はガルバノミラーシステムで走査しながら試料を照明し、もう一方は、リファレンス用の非線形結晶を照明し、試料からの高調波光と非線形結晶用からの高調波を検出器上で精密に重ねることで、干渉強度のインターフェログラムを取得し位相を算出する。しかしながら、スキャナでビームを走査するとき、ビームの光路の光学距離が変化することが大きな問題となり、これによる位相ずれを補正することが非常に難しいことがわかった。今後、干渉光学系を同軸型に変更することが必要という結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度には、干渉イメージングの基礎光学系を完成させ、検証実験を行うことを目標としていた。しかしながら、予定していた光学系では、干渉イメージングの実現が困難であることがわかり、光学系の構成の変更を決断するに至った。この紆余曲折があったため、予定していた目標まで到達することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
光学系構成を変更し、同軸型の干渉光学系の設計、構築に直ちに取り組み、進捗の遅れを取り戻す。計画どおり、干渉イメージング装置の分析能・感度・利便性を向上するために、以下の3つの技術の導入を実験的に検討する。(1)3次元ポラリティ計測のためにベクトルビーム技術。(2)感度向上のための増感剤として色素標識技術。(3)厚さのある試料の計測に応用するため後方散乱光での干渉計測。
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