研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
16H01442
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤井 哲 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20500367)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 形態形成 / 細胞運動 / コンピューターシミュレーション / 数理モデル / ライブセルイメージング |
研究実績の概要 |
細胞集団における3次元形態の新生においては、細胞間接触によって誘導される細胞の一方向的な運動、さらにそこから出現する集団的な回転運動が知られているが、走化性などの他の要因とあわせて接触依存性がどのような変形や運動をもたらしているのか、回転がいかにして利用され、3次元形態につながるのか多くが未解明である。本研究では、多細胞による3次元的組織形成の溯源的な例として、細胞性粘菌の集合塊(マウンド)上端の頂端(tip)構造の形態形成に注目した。マイクロ流体デバイスによって走化性誘引物質の濃度勾配を制御し、細胞間接触と走化性によって誘起される運動の連動を解析した。隔離した細胞間の接触運動の解析から、追従運動時は細胞極性が増強されるとともにcAMP濃度勾配に対する応答性が低下する様子が観察された。ライブセルイメージング解析より、細胞間接着領域においてSCAR複合体の活性化と樹状F-actin形成が持続的に誘起されていることがわかった。また、これらの追従運動とそれにともなる分子動態は細胞間接着分子TgrB1とTgrC1のヘテロフィリックな相互作用に依存することが示唆され、これらが追従運動を促すシグナルとして働いていると考えられる。回転運動中の細胞においても、SCAR複合体の活性化は進行方向の細胞間接着領域に限局されている様子が観察され、これに対し、tgrB1欠損株は進行方向以外の領域にも活性化が見られ、運動方向の制御様式に変化が生じていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小デバイス内でのクラスター化した細胞の運動解析、細胞内分子動態の可視化が計画通り進んでいる。計算機シミュレーションの方も、GPU計算機の導入により、フェイズフィールドによる多細胞シミュレーションを実装し、試行錯誤が続いているが、概ね計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
追従運動は細胞間接着分子TgrB1とTgrC1のヘテロフィリックな相互作用に依存することが初年度の解析から示唆され、追従運動を促すシグナルとして働いていると考えられる。精製タンパクを用いた細胞操作を取り入れていくことで、追従運動の根幹に迫る。また、組織中の細胞運動の3次元イメージング解析をおこない、細胞の運動規則を表現した数理モデルと実験の相互検証を通じて、元々バラバラであった細胞から3次元の形ができる原理の理解を目指す。マイクロチャンバーを用いた細胞運動解析は、計画班上野らと技術協力を通じて連携する。数理モデルシミュレーションは計画班の武田グループ、秋山グループらと連携することで、動物組織との類似点などを浮かび上がらせる。
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