腎臓の機能単位すなわちネフロンは胎生期の後腎間葉から形成される。間葉から上皮への転換によって球状の腎胞が形成され、これがC字体、さらにはS字体に変形し、最終的にネフロン(糸球体や尿細管)に分化する。C字体からS字体に変化する際にはそれまでと反対側の膜が収縮する必要があると考えられるが、何がこれを制御するのか、どんな力学的機構が働いているかは一切不明である。よって本計画は、マウスの腎臓形成におけるS字体の形成過程を可視化し、その物理的な変化を理論で説明することによって、細胞集団の交互の湾曲による3D形態形成のロジックを解明することを目的とした。
S字体形成時の細胞表面(細胞膜)を蛍光標識できるマウスをCre-loxPシステムによって作成し、胎生12.5日の腎臓をフィルター上で数日間器官培養した。その過程を共焦点顕微鏡でタイムラプス解析を行ったが、解像度の高い画像は得られなかった。原因としては、蛍光が弱い上にフィルター越しの観察になること、タイムラプス蛍光顕微鏡の解像度が不十分なこと、器官培養すると生体内と比較してS字体の形成が悪いことなどが考えられた。そこで、様々な発生段階のS字体が混在する胎生15.5日の腎臓の静止像に焦点を絞って、高解像度3次元データを取得することとした。そのためにはwhole mount染色法とそれに続く透明化法、そして画像を処理するソフトウェアImarisの習得が必要となった。
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