研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
16H01451
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
堀田 耕司 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (80407147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生 / 進化 / 生物物理 / バイオイメージング / 形態形成 / AMPA受容体 / 尾部湾曲 / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
脊索動物の多くの尾芽胚は腹側に湾曲している。尾芽胚の尾の伸長に関する研究報告は多くあるが湾曲に関する報告は数少ない。これまでに、ホヤ尾芽胚は卵殻を除去しても自律的に当初腹側に湾曲し、やがてその湾曲が反転した後に孵化すること明らかにした。しかし、腹側の湾曲の力がどのような分子がどのような場所で生み出しているのかは未解明である。本研究では脊索動物尾芽胚が曲がる物理的メカニズムのロジックを明らかにし、分子機構と結びつけることを目的とし、以下の実験、①カタユウレイボヤ尾芽胚形態形成時の尾の湾曲過程の形態定量、②カタユウレイボヤ胚形成過程におけるCa2+濃度上昇の解析、③ホヤ尾芽胚期に発現するグルタミン酸受容体AMPARの機能解析、を行った。①に関しては個体の形態情報を定量的に計測するためのプログラムを開発し、実際に野生型個体10尾芽胚期における形態形成過程をタイムラプス撮影したものから定量的情報を抽出することができた。また、各種阻害剤添加個体における定量情報も得ることが出来た。今後尾部の曲がりに関わるパラメータの成分を明らかにする予定である。②に関しては原腸胚期、神経胚期、尾芽胚期を通じたCa2+濃度上昇の長時間撮影(約6~8時間)に成功した。これまで報告されている神経・筋肉分化に伴うCa2+濃度上昇に加え、内胚葉や表皮などの、新規なCa2+濃度上昇を観察できた。この濃度上昇は尾部湾曲が緩和しはじめる時期に相当することが示され、この時期の尾の形態形成と何らかの関わりが示唆された。③に関してはAMPARをノックダウンすると尾芽胚期以降、尾部が伸長したまま、通常観察される退縮が起こらないことがわかり、AMPARの初期発生におけるメカニズムの1つを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、ホヤ尾芽胚形態形成時の尾の湾曲過程の定量的な情報を得ることができただけでなく、ホヤ尾芽胚形態形成時にCa2+イオンの濃度上昇が表皮において頻繁にみられること、ホヤの尾芽胚形成後の尾部の退縮メカニズムに関する思いがけない新たな知見も得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
カタユウレイボヤ尾芽胚形態形成時の尾の湾曲過程の形態定量に加え、他の種のホヤにおいても尾の形態形成過程も同様に形態パラメータが変化するのか調べるとともに、これらの形態情報から得られた尾部の湾曲に関するパラメータがどのような阻害剤によって影響するのかを定量的に明らかにし、尾部の湾曲を制御する分子を同定する。またこの分子が実際に尾部の湾曲を制御することを立証するため、遺伝子ノックダウンを行い尾部の伸長ではなく湾曲が影響を被ることを示す。さらに、新規なCa2+濃度上昇が尾の湾曲と関わりがあるか調べるために相関関係や各種阻害剤を用いた実験を行う。
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