研究領域 | 植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム |
研究課題/領域番号 |
16H01462
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
打田 直行 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (40467692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ペプチドホルモン / 受容体 / 茎伸長 |
研究実績の概要 |
高等植物の体は様々な細胞群が協調して振舞うことで成り立つが、その全身的な協調を達成するための「長距離シグナル」の実体や作用メカニズムに関する知見は極めて少ない。特に、長距離シグナルはそもそもは局所的な細胞応答をきっかけに生まれ、その部位から周囲に向け発信されると想定されるが、その最初の段階である「シグナルの発生の仕組み」に関する知見は圧倒的に不足している。本研究では、茎全体の協調的な伸長の制御で茎の内皮細胞から分泌される機能冗長的なペプチドEPFL4とEPFL6が、それらの受容体であるERECTA(ER)によって篩部伴細胞で受容されると、篩部伴細胞から茎全体の協調した伸長を導くさらなるシグナルが発生する、という事象において、この篩部伴細胞で生まれて茎全体に作用するシグナルの実体、ならびに、このシグナル作用が及ぶ範囲や作用先が受ける影響、の解明を目指している。 本年度は、er変異体とepfl4 epfl6二重変異体の茎成長を野生型の成長と詳細に比較解析し、茎の中のどの領域が本制御システムの影響を直接的に受ける現場なのかを、組織レベルと細胞レベルの双方で明らかにした。また、今後のEPFL6による刺激実験を見据えて、時空間的に任意の点でEPFL6シグナルをOFFからONにできる発現誘導植物の作成に挑戦した。複数の誘導系に関して形質転換体を作出し様々な条件検討をおこなたところ、そのうちの1つの系においては、EPFL6シグナルをOFFからONに切り替えることができる発現誘導条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度に活用するための植物体の作出と、それを用いる際の条件の設定を予定通りに進めることができた。また、次年度のRNA-seq解析の際に、サンプルを調整するべき茎領域を限定することもできた。総じて、次年度へ向けて順調に計画が進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
EPFL4/6-ERの制御で影響を受けるとして同定した茎領域に関して、野生型とer変異体とepfl4 epfl6二重変異体で、細胞分裂活性がどのように変化しているのかを解析する。また、時空間的に任意の点でEPFL6シグナルをONにできる発現誘導植物と誘導条件が確立できたので、この系を用いてEPFL6刺激をOFFからONに切り換えたときに遺伝子発現が変動する様子を解析する。その結果として浮かび上がる重要制御因子候補リストの中から、解析対象にすべき因子群の優先順位をつけ、着目した各々の因子に関して機能欠失変異体の表現型の解析、プロモーター解析、タンパク質局在解析を行う準備を進めていく。
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