2017年度はRAE3のクローニングを試みた。ファインマッピングにより4つ遺伝子に絞り込んだ後、塩基配列の比較から候補遺伝子を1つ見いだした。また、染色体断片置換系統群を用いた解析から、RAE1/An-1とRAE2は芒伸長に対して独立に機能し、両方を機能型で持つ系統は片方だけを持つ系統より長い芒を呈する、すなわち相加的に働くことが示された。一方でRAE3を機能型で持っていても芒は伸長せず、RAE1/An-1もしくはRAE2とペアになって働くことが示された。RAE1/An-1-RAE2-RAE3の遺伝的上位性を明らかにするため、RAE1/An-1–RAE3をペアでもつ系統(A)、RAE2 -RAE3 をペアでもつ系統(B)、RAE3のみをもつ系統(C)、SGR19系統を用いてqRT-PCRにより各遺伝子発現レベルを検証した。その結果、AとBではRAE1/An-1、RAE2が高発現しているのに対し、CとSGR19では両方の遺伝子発現は低く抑えられていた。このことからRAE3はRAE1/An-1、RAE2の遺伝的上位にあり両方の遺伝子発現を制御していることが示唆された。また前年度までは、O. rufipogonまたはO. glaberrimaを供与親、O. sativaを背景親としたCSSLを用いて解析を行っていた。今年度はO. sativaを背景親に固定し、AAゲノム種のイネ7つを供与親とする11のCSSLを解析することで、上記の2種以外のAAゲノム種イネがもつ芒関連遺伝子について広く議論しようと試みた。各系統における芒長と一穂あたりの有芒種子割合を調査した結果、複数の染色体領域が保存されていることが明らかとなった。特に第4、第8染色体が供与親に置換した系統はほぼ全て有芒であり、配列解析の結果RAE1/An-1とRAE2が機能型であることが明らかとなった。
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