研究領域 | 植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム |
研究課題/領域番号 |
16H01470
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松下 智直 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20464399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フィトクロム / 植物 / 遺伝子発現制御 / 光受容体 / 光シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
植物の主要な光受容体フィトクロムは、専ら標的遺伝子の転写量を制御することでシグナルを伝達すると考えられていたが、我々は最近、フィトクロムが転写量制御に加え、ゲノムワイドに2,000を超える遺伝子の転写開始点を変化させることにより、mRNAの5’末端の長さを制御し、その結果、数百という数のタンパク質の細胞内局在が光依存的に変化することを発見した。ここで興味深いことに、フィトクロムにより転写開始点の制御を受ける遺伝子のほとんどは、転写量(mRNAの総量)を一定に保ったまま、異なる複数の転写開始点の使用頻度をフィトクロムシグナルに応じて変化させるが、その分子機構は不明である。 そこで、フィトクロムによる転写開始点制御の分子機構解明を目的として、2~3の標的遺伝子について、そのゲノムDNA断片の3’末端にGFP遺伝子を融合したものを、それぞれのノックアウト変異体に導入し、形質転換相補系統を作製し、それらをEMSにより変異原処理し、光依存的なタンパク質の細胞内局在変化に異常を示す変異体をそれぞれ単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異体スクリーニングの1次選抜として、EMS処理したM2集団の芽生えを暗所もしくは連続赤色光下で5日間育て、蛍光実体顕微鏡観察により、GFPの細胞内局在に異常を示す変異体をスクリーニングした。その際、赤色光条件でのスクリーニングでは、フィトクロムB(phyB)欠損変異体が多数単離されることが予想されたため、赤色光条件にて顕著な胚軸徒長を示す個体に対しては、ウエスタン解析を行い、phyBタンパク質の蓄積量低下が見られた系統は、解析の対象から除外した。これにより、意図した因子の変異体を効率的に選抜することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
単離した変異体候補について、総括班・研究支援センターによる支援を受け、次世代シーケンサーを用いたゲノムDNAリシーケンスによる高速マッピング等を行い、原因遺伝子を同定する。intragenicな変異体では、その点変異の箇所を解析することで、シス配列の同定が可能となる。一方、extragenicな変異体の解析からは、当該制御に関わるトランス因子が同定できると考えられる。さらに、2,000以上の標的遺伝子のプロモーター領域に濃縮される塩基配列を情報科学的に解析することにより、当該制御に関わるシス配列を同定する。これらの解析結果を組み合わせてモデルを構築し、その検証をさらに進めることで、フィトクロムによる転写開始点制御の分子機構解明を目指す。
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